企業と戦わなくなった労働者たち 現代における「ストライキ」の意義とは? 千歳相互観光バス終日運休に見る、権利意識の欠如
4月25日、千歳相互観光バスがストライキを行い、全路線が終日運休した。現在における、ストライキの“意義”とは何なのか。
「賃上げ」「雇用維持」以外の目的も

ストライキの目的は、たいてい
・賃上げ
・雇用維持
だ。しかし、以外な理由で行ったのが岡山県の両備バスとグループ会社の岡山電気軌道の労働組合だ。その目的は、
「競合路線の参入拒否」
である。
2018年4月、同社は“ドル箱路線”である岡山~西大寺間に、八晃運輸(岡山県岡山市)が運行する新路線が競合路線として参入することに反発。会社側は、黒字路線の収益で賄っている赤字路線の廃止届を提出するなど反発を強めていた。
そうしたなか、労働組合も競合路線の参入で賃金低下や雇用不安があるとして、1時間のストライキを行った。さらに、別の日には乗客から運賃を取らない
「集改札スト」
という新たな戦術も投入されている。これは、労使双方が競合路線の参入を許さないという目的で一致してストライキを行うという珍しいケースだ。
賃上げ以外の目的でストライキを行う事例は過去にはあった、例えば1966(昭和41)年にはベトナム反戦を訴えて、総評系組合がストライキを行う「10・21反戦スト」が行われている。しかし、賃上げ以外の目的でストライキを行うというロジックは既に忘却されているに久しい。
両備バスのケースは、市民から
「目的がわからない」
「新規参入に対する嫌がらせとしか思えない」
と反発がされる結果となった。そのためか、その後は同類のストライキは行われていない。