企業と戦わなくなった労働者たち 現代における「ストライキ」の意義とは? 千歳相互観光バス終日運休に見る、権利意識の欠如

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4月25日、千歳相互観光バスがストライキを行い、全路線が終日運休した。現在における、ストライキの“意義”とは何なのか。

ストライキの現在地

労働争議の種類別件数の推移(画像:厚生労働省)
労働争議の種類別件数の推移(画像:厚生労働省)

 交通機関では近年、どのような会社でストライキが行われているのか。国鉄時代はストライキや順法闘争などがたびたび起こっていたが、近年のJRではほとんど発生していない。

 もちろんゼロになったわけではなく、2023年3月にJR東日本管内で動労千葉によるストライキが行われている。しかし同社の場合、ストライキが行われても、会社側が代替要員の確保を行うため、列車の運休は生じない。

 また、JR東日本ではストライキ計画が原因で労働組合が分裂する騒動も起きている。2018年に同社の最大労組であるJR東労組は、春闘の席で経営側に対してストライキ権の行使を通告した。これは同組合が組合員一律で給与をベースアップを要求した際に、会社側が拒否の回答を示したことに対して、ストライキなどを行う可能性を予告したものだ。

 同組合は、国鉄分割民営化の際に民営化賛成を掲げた組合が母体であり、JR発足後は「労使共同宣言」を維持していた。そんな組合がストライキを予告したことは注目されたものの、ストライキは結局行われなかった。

 それどころか、これを契機に運営方針に反発した組合員の脱退が相次ぎ、2018年3月に社員の8割にあたる4万6870人を組織していた組合は7月には1万3540人まで激減。脱退者による新組合も結成され、完全に同社での影響力を失うことになった。

 このように、鉄道会社のストライキはまれなものとなっている。比較的大規模に行われたのは、2014年3月に相模鉄道労働組合が行った春闘のストライキである。このときはベースアップの金額が妥結しなかったため、組合側は始発の午前4時45分にストライキに突入。しかし間もなく妥結に至ったことで、午前6時30分にはストライキ解除となった。

 このほか、地方のバス会社でも春闘における交渉がまとまらなかった結果、ストライキに突入する事例はいくつかある。ただ、多くは予告までは至るものの、回避されるケースが多い。

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