米IT大手で相次ぐリストラ 日本も「解雇規制」緩和すべきか? 人材流動化という美辞麗句に潜んだ、深い落とし穴とは
米国では、市場の変化に対応する組織変革のダイナミックな方法として、解雇や雇用調整などによる「人の入れ替え」がよく行われる。そのメリットとデメリットとは。
規制緩和の落とし穴

しかし、上述の解雇規制緩和の理屈にはいくつか落とし穴がある。
まず、
「解雇できるから気軽に採用する」
ということを、実際には行わないということだ。
多くの企業で採用において最も避けたいと思っていることが「ミスマッチ」である。
「合っている人を落としてもよいから、合わない人を採用するな」
というのが合言葉になっている。
それは、ミスマッチによって退職などが起これば、企業・個人双方ともに多大な損失を負うからだ。
百歩譲って、もし解雇規制が緩和されて気軽に採用する企業が増えたとすれば、その企業は早期退職によるさまざまな損害によって、生産性の低下に苦しむことになるだろう。
規制緩和の問題点

次に、流動性が高いと労働者に機会があるということだが、ある企業で解雇された(つまりその企業では不要とされた)労働者が、そのスキルセットのままでどこか別の企業に欲しいと思われることはなかなかない。
新たな時代に即したスキルを獲得しなければ、同待遇での再就職は難しい。解雇規制の厳しい現在、各企業は躍起になって、自社の社員のスキルセットが陳腐化しないように
「リスキリング(スキルの再教育)」
の必要性や方法論を議論している。
しかし、解雇規制が緩和すれば、企業はスキルが陳腐化した労働者を「リスキリング」する努力をするよりも、彼らを解雇するだろう。しかし、その後、新しいスキルを持った人を採用できるとは限らない。