三菱自動車「226億円損失」の衝撃 EV加速止まらぬ中国で、エンジン車“現地生産停止”が意味するものとは

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三菱自動車は4月25日、2022年度単体決算で226億円の損失計上を発表した。同時にこれら損失の主な理由は、中国国内市場において内燃機関モデルの販売不振が続いていることと伝えられた。

2022年度単体決算の損失「226億円」

三菱自動車のロゴ。2020年1月22日撮影(画像:EPA=時事)
三菱自動車のロゴ。2020年1月22日撮影(画像:EPA=時事)

 三菱自動車は4月25日、2022年度単体決算で226億円の損失計上を発表した。同時にこれら損失の主な理由は、中国国内市場において内燃機関モデルの販売不振が続いていることと伝えられた。

 さらにその影響で、生産済み車両の在庫がダブつくという深刻な問題も顕在化。当面の対策として、中国国内での内燃機関モデルの生産を2023年3月から停止するに至った。この措置は現在も続いているという。

 三菱自動車がこうした状況に至った根本的な原因について、それを明らかにするためには少々時間をさかのぼる必要がある。

中国がEV化を推進した背景

三菱自動車のウェブサイト(画像:三菱自動車)
三菱自動車のウェブサイト(画像:三菱自動車)

 21世紀に入って間もなく、日本や欧米の自動車市場が自動車メーカーに求めたのは既存の内燃機関に対する基本的なクリーン化技術だ。そしてそれに付随するハイブリッド技術などだった。

 ただしカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)は現在ほど声高に叫ばれていたわけではなく、主として窒素酸化物その他による大気汚染対策を主眼とした上での商品化だった。

 一方、この頃拡大を続けていた中国での自動車市場は混沌(こんとん)としていた。こと内燃機関技術に関しては、諸外国からの技術導入に頼っていた当時の中国国内の自動車メーカーは、これらクリーン化技術に後れを取ってしまったのである。

 その後、市場にはカーボンニュートラルという新たなブームが訪れる。二酸化炭素そのものを悪とするこの考え方は、既存の内燃機関に対して大きな逆風となる。その結果、従来は非常に狭い特殊需要のためだけの存在だった電気自動車(EV)という新たなムーブメントが、中国国内で注目されることとなる。

 ここでの新技術開発の推進は、内燃機関技術革新で後れを取らざるを得なかった中国の自動車メーカーにとって好機到来と捉えられた。すなわち日本および欧米との

「技術的なスタートラインをリセットする」

という意味ではまさに絶好の機会だったのだ。これは同時に、中国共産党指導部にとっても環境先進国をアピールする上で大きな武器になると判断された。そしてそれは見事に成功することとなる。

 ここではEV化に必須なバッテリー素材等に関して、国内資源に恵まれていたことも追い風となった。程なくして中国は共産党主導の国家的戦略として、自国内販売自動車のEV化を強力に推進、現在に至っているというわけである。

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