三菱自動車「226億円損失」の衝撃 EV加速止まらぬ中国で、エンジン車“現地生産停止”が意味するものとは

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三菱自動車は4月25日、2022年度単体決算で226億円の損失計上を発表した。同時にこれら損失の主な理由は、中国国内市場において内燃機関モデルの販売不振が続いていることと伝えられた。

今後は共産党指導部の動向次第

理想汽車のウェブサイト(画像:理想汽車)
理想汽車のウェブサイト(画像:理想汽車)

 メディアによっては、今さら内燃機関モデルを作り続けることなど

「時代遅れ」

といった論調であおり立てているところも少なくない。しかし、仮に日系自動車メーカーが内燃機関モデルの製造から一斉に手を引いてしまったら一番困るのは当の中国である。

 もちろん、中長期的な展望としてEVシフトを目指すというのは当然のことではある。しかし、今のEV大推進政策が果たしてこのまま安定して続くのか、という共産党指導部の姿勢にも疑問が残る。

 今の中国では、消費者が欲しいものが売れるという

「シンプルな経済原理」

だけで市場が動いているわけではない。そこには共産党指導部という大きなバックが存在している。その動きをしっかりと見極めないことには、企業としてどちらかに大きくかじを取るわけにはいかないのだ。

地方への市場拡大の行方

中国の地方(画像:写真AC)
中国の地方(画像:写真AC)

 結局、中国における自動車の製造販売計画は、

・共産党を信じてEV推進策に乗って突っ走る
・はたまた、世界的な市場状況を見渡しつつ、赤字を計上しない程度にEVと内燃機関の二本立てでいく

という究極の2択にならざるを得ない。

 個人的には、いわゆるチャイナリスク(中国が持つ様々な矛盾や不均衡)がなくなっていない以上、共産党を無条件に信じるのはあり得ない。

 その上で会社を中国内で存続させるためには、中国国内および外国他社との熾烈(しれつ)なEV戦争への参戦が必須となる。これも厳しい選択だ。いっそ存続が難しいのであれば

「潔く撤退」

という選択肢もあり得る。

 中国国内でのEV製造販売は、このまま共産党指導部が推進を続けるのであれば、いずれ市場は地方へも拡大する。そして国内経済格差ゆえに価格のたたき合いになる。

 今でこそ収益性の高い高価格モデルが注目されているが、それらのみで市場が満たされるのはあり得ない。価格のたたき合いになれば、製造に当たっての原料資材を国家支援の下に押さえている国内メーカーに分があるのは自明の理だ。ここで外国メーカーが主導権を取るのは難しいだろう。

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