ADASデータで事故ハイリスク地点を検出 メルセデスとロンドン交通局が目指すもの

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ロンドン交通局とメルセデス・ベンツが「Mercedes-Benz Road Safety Dashboard」を開発した。運転支援システムのデータを活用し、事故が発生する前に、市内の事故発生リスク地点の検出を狙う。

運転支援データの活用事例が増えている

 このような事例のほかにも、車両が収集するデータを活用して新たなソリューションを開発する試みは多方面で進んでいる。

 代表的なものは、車載カメラが撮影した映像データを収集し、リアルワールドのHDマップのカバー率と更新頻度を向上しようとする仕組みだ。自動運転レベル2用の映像処理チップでシェアトップのモービルアイが運用するREM(Road Experience Management)がよく知られている。

 そのほか、車両の挙動データを自動車保険の料率計算の変数に利用し、事故リスクの低いドライバーには割安な保険料で自動車保険を提供するテレマティクス保険(PHYD保険)や、ワイパーの作動データやABSの発動データを集めて気象情報や道路凍結情報に活用する事例もある。

 今後、車両に搭載されるセンサーが増え、それと同時に車両のオンライン化も進むため、このようなデータ活用事例はますます広く、深くなっていくことは間違いないだろう。

関係者のコメント

 メルセデスのUMS部門は、都市をより住みやすくするための安全で持続可能、効率的でアクセス可能なモビリティ製品を開発するために立ち上げられた部門だ。この部門によってメルセデスのモビリティに関する専門知識が都市にもたらされ、共通の価値が生まれた。チームは市の代表者、公共交通機関、業界横断的なパートナー、およびメルセデス内外の専門家と緊密に連携して新しい課題とトレンドを早期に特定して対応している。現在および将来の世代に最適な都市型自動車、データドリブンなモビリティプロダクト、市民中心の都市型モビリティシステムの世界をリードするポートフォリオを開発することが部門の目標としている。

 メルセデスUMS部門リーダーのダニエル・デパリス氏は「ロンドン交通局および当社の専門家と共同で、交通安全のための期的なプロジェクトを開始し、現在、開発が完了段階にある」と話し、「当社のビジョンは、道路利用者をアクティブセーフティシステムで保護することだ。ロンドンの専門家との協力によって、都市環境における複雑な課題を効果的に克服し、交通安全に貢献できる」と述べた。

 ロンドン交通局は、ロンドン市長サディク・カーン氏に対し、交通に関する戦略とコミットメントを提供する統合交通局だ。地下鉄、ロンドン・オーバーグラウンド、ドックランズ・ライト・レイルウェイ、市電、バス、TfL鉄道など、ロンドンの公共交通網を運営するほか、ウォーキングやサイクリングの促進、ロンドンの主要道路の管理も行う。

 ロンドン交通局コマーシャル・イノベーション部門責任者のラケシュ・シャー氏は「当局は、2041年までにロンドンでの交通事故による死傷者をゼロにすることを目標とした『ビジョン・ゼロ』戦略に取り組んでいる。今回のメルセデス・ベンツとの提携によって、目標達成に向けた、データに基づいた新しい技術の開発の支援となるだろう」と語り、「テクノロジーの進歩に伴い、ロンドンの道路環境をより安全にする方法を模索することが不可欠だ。このツールから得られた見通しは非常に興味深いものであり、当局は現在、ロンドンの車両から得たデータをどのように活用すればリスクのレベルをさらに理解できるかを検討しているところだ。それによって、適切な安全対策を計画し導入することができると考える。さらに、今回の提携を通して、相互の価値を創造することができると考える」と語った。

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