トラックドライバーの社会的地位向上を! それに欠かせない「3つの論点」とは? エッセンシャルワーカーは医療従事者だけではない
1.社会的認知の向上

このような事象は先進国に共通しており、
「現代社会の病理」
だとも言える。その意味では、社会の維持に重要なエッセンシャル・ワーカーを軽視する風潮は世界共通だとも言えるが、日本ではこれに保身の要素が加わる。
就職人気ランキングを海外と比較すると、日本では公務員のように、社会的地位が安定した職業が志向される傾向があり、ベンチャー企業などの人気が低い。
介護福祉などもそうだが、社会のために
「体を張る(リスクを取る)」
タイプの職業が不人気なのは、このような安定志向と無関係とは思えない。
しかしこの傾向は大いに問題だ。ドライバーに限らないが、「誰もやりたがらない仕事」を誰も担わない社会は、持続可能な社会とは言えない。
物流危機は単なる労働力不足の問題と考えるのは
「やや短絡的」
であり、このような職業意識の低さを改めていく必要があるということを、改めて指摘しておきたい。
2.優れた労働条件の提供

ドライバーが感じる「報われなさ」の根本要因は、長時間労働なのに低賃金という労働条件の劣悪さである。あえて言うまでもないが、労働条件を改善すること無しにドライバーの地位向上はあり得ない。
もっとも、ドライバーの給与は以前から低かったわけではない。1990年代以前は、ドライバーはむしろ
「稼げる職業」
だったわけだが、規制緩和に伴う競争激化によって、現在のような賃金水準に落ち込んでしまった。
その結果、上述の「パワポ職人」のようなホワイトカラーの給与は高い水準に保たれる一方、ドライバーの給与は平均で400万円代にまで低下を続けてきた。これはデフレ経済下の日本社会が生んだ矛盾というほかない。
加えて、このような給与低下による影響が最近とみに顕在化している。物価高騰により、ドライバーの給与では、普通に
「家族を養うのさえ難しくなっている」
からだ。