トラックドライバーの社会的地位向上を! それに欠かせない「3つの論点」とは? エッセンシャルワーカーは医療従事者だけではない
時給換算「1500円」という現実

ドライバーの拘束時間は、年間では3400時間が上限である(2024年4月以降の新規制による)。昼食休憩などを除いて、ざっくり3200時間程度が労働時間だとして計算してみると、400万円台中盤というドライバーの平均的な年収は、時給では
「1500円前後」
にしかならない。
都市部ではコンビニ等のアルバイトを1300円程度で募集している事例もよく見かけるが、やはり他産業と比較してみると見劣りするのは明白である。現在の賃金水準では、あえてドライバーになろうとする若者が見当たらないのは当然である。
筆者としても給与の総額を上げるのが難しいことは理解している。ただ、無駄な待機時間を減らす、手荷役を無くすなどによりトラック運送の時間生産性を上げる、つまり
「時間給を高めること」
は不可能ではない。
これが、同じく生産性の低さが課題となっている、介護福祉などの他産業では、生産性向上の打ち手自体が難しいわけだが、運送業では生産性向上のためにやるべきことは明白だ。
つまり、トラック運送の生産性向上は、
「社会全体で改善する意思」
があるかないか、の問題だとも言える。
3.職場文化の改善

トラック会社の職場の問題として常に話題に上るのが「人間関係」への不満だ。人間関係のトラブルは、ドライバーの退職理由上位の常連でもある。
なお、昔のような「殴る、蹴る」といった暴力的なパワハラはほぼ見られなくなったが、それでも嫌がらせ、イジメの類いは無くならない。トラック運送業のブラックなイメージは、実際、このようなカルチャーに起因する部分が大きいのではないか。
ところで、経営学の分野では
「心理的安全性」
というキーワードが話題だ。
心理的安全性が高い職場では、個々の社員が安心して意見表明ができ、組織能力が高まることが報告されている。
このような心理的安全性の効果は、トラック運送業のような職場にも当てはまる。従業員が心理的な安全性を感じることができない、一言で言えばギスギスした職場では、事故やトラブルの隠蔽(いんぺい)が起きたり、伝達ミスによるクレームが多発したりしてしまう。なんでも頭ごなしに否定される職場では、改善提案も出てこない。
このように、職場文化の問題は、トラック会社の経営パフォーマンスにも大きく影響するのだ。