「テロとの戦い」時代における兵站の行方とは? 近代以前の戦略回帰か、融解する最前線・後方地域の境界線

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「テロとの戦い」の時代におけるロジスティクスとは何か。いったいどのように変化していくのか。解説する。

軍事ロジスティクスが抱えた課題

テロリストのイメージ(画像:pixabay)
テロリストのイメージ(画像:pixabay)

 その一方で、こうした軍事ロジスティクスにおける革命も新たな問題を多々生じさせた。

 例えば、イラク戦争の初期の段階では、地上部隊の進撃速度があまりにも早かったため、必要な物資を必要なときに必要な量だけ補給するとのジャストインタイム方式ですら、その欠点を暴露することになった。

 また、この戦争では米軍の犠牲者の3分の2以上がロジスティクス担当部隊から出ている。ロジスティクスが軍隊の「アキレス腱(けん)」との事実は、技術が大きく発展した今日でも変わらないのである。

 さらに冷戦終結以降、今日の戦争は「テロとの戦い」の様相を呈しており、国家間戦争を想定して構築された従来のロジスティクスの方策が通用し難くなってきている。

 これは今日、世界各国の軍隊が抱えた大きな問題のひとつである。すなわち、従来の正規軍同士の戦争では、敵の位置が比較的特定しやすかったため、戦場がどこになるか、そのために補給線(ライン)をどう確保すべきか、などある程度は予測可能であった。

 ところが、テロとの戦いでは戦場がどこかは曖昧である。その結果、各国の軍隊は現在、必要な物資をできる限り自ら携行する方策(あるいは相互支援)に移って――「回帰」して――いるようである。

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