東京都交通局が「偽装請負」疑い “公営”交通が、非正規労働者を最低賃金ギリギリで酷使、毎年10%以上離職の現実とは

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3月、東京都営交通協力会が東京都労働局などから是正勧告を受けていたことが、一部メディアによって報じられた。“公営”交通が非正規労働者を劣悪な待遇で酷使していたのだ。

薄給で毎年10%以上が離職

東京都営交通協力会の入るビル(画像:(C)Google)
東京都営交通協力会の入るビル(画像:(C)Google)

 なぜ、いまになって協力会の問題が注視されつつあるのか。その背景には、数年前から都議会で協力会の問題が何度も取り上げられていることがある。

 発端となったのは、都総務局が2020年3月に公表した「一般財団法人東京都営交通協力会に対する調査結果報告書」だ。

 この報告書では2019年4月時点で、協力会の職員数などを次のように記している。

・職員数:1753人
・うち固有職員:528人
・都派遣:4人
・契約職員/再雇用職員等:1221人

 この調査結果によって、都交通局の業務が協力会に雇用された多数の非正規労働者によって請け負われている事実が明るみに出た。さらに、待遇も劣悪という疑いを持たれたのだ。

 報告書によると、協力会では毎年200人程度の離職者が発生していると記している。ようは、毎年10%以上が離職していることになる。報告書ではこの多さに着目し、過去5年分を調査。多くが自己都合退職とした上で、こう記している。

「協力会の業務は、他の鉄道グループ会社においても同様な業務があるため、賃金等の待遇比較の結果、退職する職員が出てくるとのことであった。(中略)そのため、協力会では、比較的定着率の高い従業員による紹介制度などの募集方法を取り入れるなど、職員の定着率の向上に努めている」

ようは、賃金が安いので離職者が絶えないということである。

 2022年3月16日の都議会公営企業委員会では、離職者の多さが取り上げられているが都側は

「職員の雇用に関しましては、法令等で定められた基準や手続きに基づき団体がその責任において適切に対応しているものと認識しております」

と回答するにとどまっている。

 また、2022年10月21日の公営企業会計決算特別委員会第1分科会では、具体的な給与の額も問題になった。ここで、協力会契約職員の賃金は

「月収20万円程度(注:総支給額である)」
「研修中は時給1075円」

で、東京都最低賃金ぎりぎり(2022年度は1072円)であることが示された。交通局職員と同等の職務でありながら、格差のある問題点が指摘されている。

 これに対して都は

「交通局職員は18歳採用で毎年昇給した場合5年目で17万400円」

と答える一方、協力会に関しては「把握する立場にございません」と回答している。

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