東京都交通局が「偽装請負」疑い “公営”交通が、非正規労働者を最低賃金ギリギリで酷使、毎年10%以上離職の現実とは
3月、東京都営交通協力会が東京都労働局などから是正勧告を受けていたことが、一部メディアによって報じられた。“公営”交通が非正規労働者を劣悪な待遇で酷使していたのだ。
是正勧告の問題点とは

冒頭の話に戻るが、協力会は労働環境をめぐり複数にわたって、東京都労働局から是正勧告を受けていた。ひとつは、
「都交通局と協力会の契約書類」
に関するものである。
報道によれば、東京都と協力会の交わした仕様書では、非常時に協力して対処すべきケースとして「その他事故が発生した時」という記述があった。都労働局はこれを「偽装請負」につながる恐れがあると判断したのである。
非常時に協力することが、どうして偽装請負という問題になるのか。偽装請負とは、実体は労働者派遣なのにもかかわらず、形式的には請負契約をとることだ。類似した業務を行っていても労働者派遣か請負契約かで、業務の仕組みは大きく異なる。労働者派遣の場合は、派遣先の企業が直接指揮命令を行える。
対して、請負契約では派遣先が直接指揮命令を行うのは違法行為となる。なぜ、そうかというと、偽装請負が行われた場合、責任の所在が曖昧になり労働者が不利益を被ることにつながるからだ。
今回の事例では、事故処理を協力して実施した場合、都交通局が協力会の職員に命令して業務を行えば違法となるわけだ。
都労働局の是正勧告と同時に明らかになったのが、協力会が労働者の管理を怠っていた問題である。こちらは亀戸労働基準監督署が是正勧告を行ったもので、
・職員採用時に労働条件を記した書面を渡していなかった
・出退勤を記録せず労働時間を把握していなかった
という事実が明らかになっている。また、こうした業務では日常的にあるはずの、責任者による出勤・退勤時の点呼すら行われていなかった。