200km超の「上野東京ライン」 まさかのトラブル救う700m「短絡線」をご存じか
事故の影響が遠くへ「直通」

JR東日本の「上野東京ライン」と「湘南新宿ライン」は、長距離かつ複雑な直通運転を実施している。乗り換えなしで首都圏の南北をつなぐことで、利便性が飛躍的に向上した一方、事故や停電といった輸送障害が発生した時のダイヤ乱れは泣き所だ。
さまざまな対策が打たれている中で、興味深いのが、上野東京ラインにおける横須賀線を利用した迂回(うかい)運転である。特に、大船駅構内に存在する約700mの「短絡線」の活用には、いち早く運転を再開しようとの苦心が凝縮されている。
湘南新宿ラインと上野東京ラインは、いずれも、首都圏を南北に貫くJRの輸送サービスの愛称である。
前者は宇都宮線(東北本線)、高崎線などと東海道本線、横須賀線とを新宿、渋谷経由で結ぶルートで、2001(平成13)年に運行を開始。後者は宇都宮線、高崎線、常磐線などと東海道本線を上野、東京経由で結ぶもので、2015年から運転されている。
その便利さとは裏腹に、いざ輸送障害が起きると、ダイヤ乱れの影響はなかなか収まらない。直通の距離が200km以上に及ぶことから、神奈川県の小田原あたりで起きた事故が、群馬県や栃木県に影響することも珍しくない。
2021年10月10日に埼玉県蕨市の変電所で発生した火災で、宇都宮線や京浜東北線にとどまらず、東海道本線なども遅れたことは記憶に新しい。事故の影響も広く遠く「直通」してしまうのである。
JRも手をこまねいているわけではない。運転見合わせから復旧にかけての迂回運転が、特に2015年に上野東京ラインが開業して以降、充実しているのだ。
上野東京ライン(東海道本線)が運転見合わせとなった時、
「横須賀線の線路を利用して運転します。川崎駅は通りません」
といった案内放送を耳にした人も多いのではないだろうか。
東海道本線は止まっても、並行する横須賀線に支障がなければ、すぐさまルートを変更して列車を走らせ、乗客が駅に滞留することを防ぐ。そうした措置が、迅速に取られるようになっている。