200km超の「上野東京ライン」 まさかのトラブル救う700m「短絡線」をご存じか

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JR東日本の「上野東京ライン」で輸送障害が起きた際、横須賀線を利用した迂回運転が行われることがある。大船駅構内に存在する約700mの「短絡線」の活用を中心に紹介する。

折り返しのインフラ整備も

大船駅の案内表示(画像:写真AC)
大船駅の案内表示(画像:写真AC)

 横須賀線の線路を迂回した列車は、大船駅の7番線に到着する。横須賀線下りホームである。この先、列車は東海道本線とも横須賀線とも違う単線に踏み入れ、横須賀線の上り線の下をくぐり、車両基地(鎌倉車両センター)へと向かう引き込み線に並行する。

 これが、横須賀線から東海道本線に至る約700mの「短絡線」である。車両基地へと迷い込んでしまうのでは、という雰囲気の細道を進み、複線の東海道本線に合流すると、列車はスピードを上げ、何事もなかったかのように藤沢へ向け快走するわけである。

 武蔵小杉経由の横須賀線の線路ができたのは1980(昭和55)年で、既に40年以上が経過している。また、大船の「短絡線」は、少なくとも1970年代には存在していた。しかし従来は、事故などの異常時にこれらを用いた「迂回運転」はほとんど行われてこなかった。

 転機となったのは、2015年の上野東京ラインの運転開始である。湘南新宿ラインとともに、長距離かつ複雑な輸送体系が並立したことで、異常時のバックアップ体制がより精査された結果といえるだろう。

 この他、上野東京ラインにおいては、南北の直通運転を取りやめ、上野や東京で折り返し運転とする措置も、同時に行われる。ダイヤ乱れの影響範囲を狭める目的である。

 さらにJR東日本は、通常は15両編成の列車が入らない高崎線の深谷、岡部、本庄駅のホームを延伸し、異常時の「逃げ場」とする工事や、さいたま新都心~大宮間にある「大宮操車場」に折り返し用の線路を増設する工事などを2017年度以降、推し進めている。

 ここまで述べた各種の取り組みは、運転見合わせの区間をできるだけ短くし、利用者の影響を小さくしようという考え方の実践だ。実際、横須賀線などを迂回ルートとして活用することで、1時間近くを要していた運転再開までの時間が30分程度にまで短縮される効果もみられている。

 乗務員の訓練も欠かせない。例えば、異常時には上野東京ラインに乗務できるよう、日頃は湘南新宿ラインを担当する乗務員も、東京方面の乗務を経験できるようなローテーションが組まれている。

 既存の設備を「再発見」し柔軟に活用するとともに、乗務員の経験も広げることで、長大な直通運転の「いざ」に備えているわけである。

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