トヨタ「満額回答」で喜ぶのはまだ早い? 格差大きい自動車業界、末端への波及は望めるのか

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トヨタ自動車は2023年春闘で、組合からの賃上げ要求に対し、満額で回答した。一見、喜ばしいことだが、自動車業界全体のことを考えると、手放しで喜べない面が見えてくる。

浮き彫りになる格差

公正取引委員会(画像:写真AC)
公正取引委員会(画像:写真AC)

 トヨタ自動車では春闘での満額回答に対し、協力会社などの中小企業への賃金向上の波及効果を狙っているという。しかし少なくとも現段階では、その効果は限定的であり、上流の大企業のみが恩恵を受ける形になっているように見える。格差が浮き彫りになっているともいえるだろう。

 物価や燃料費の高騰が市民の生活を直撃する中、賃金の向上は人々の生活に直結する。トヨタ自動車の満額回答によって、自動車業界で賃上げの機運が高まったのは事実であり、他の企業が賃上げの検討を行うきっかけをつくったのは間違いないだろう。

 トヨタとしても、仕入れ価格などが高騰する中、賃上げに踏み切ったのは、相当の覚悟が必要だったことは想像に難くない。

 しかしながら、トヨタ自動車が言うような「中小企業への賃金向上の波及効果」が発生するにはまだまだ遠い。

 今春闘の労使交渉を佐藤恒治次期社長らに任せた豊田章男社長は、2022年の春闘話し合いの席で、労使宣言の「わが国の基幹産業としての自動車産業の使命の大きさと、国民経済に占める地位を認識し、労使相協力して、この目的のための最善の努力をする」という言葉を引用し、それが自分たちの使命であると述べた。

 どうかその言葉の通りになるよう、今後の動きに期待したい。

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