トヨタ「満額回答」で喜ぶのはまだ早い? 格差大きい自動車業界、末端への波及は望めるのか
トヨタ自動車は2023年春闘で、組合からの賃上げ要求に対し、満額で回答した。一見、喜ばしいことだが、自動車業界全体のことを考えると、手放しで喜べない面が見えてくる。
部品メーカーに賃上げ要求と値下げ圧力

しかしながら一方で、トヨタ自動車は2022年度下半期から、部品メーカーへの値下げ要請も再開した。
トヨタ自動車と1次部品メーカーとの間ではこれまで、年に2回部品価格の交渉が行われ、値下げ要請が行われてきた。2022年度上半期は、半導体不足や、新型コロナウイルス感染症の影響による部品不足により値下げ要請は見送られていた。
しかし2022年7月からは、通常と変わらない水準での生産が予定されているなど、需要の回復が見込まれている。そこで2022年度下半期から、およそ1年ぶりに値下げ要請が再開することになった。
部品メーカーには、過剰品質の見直しや素材の使用量の削減、より安価な素材への切り替えなどによる原価改善が求められる。
値下げ幅はおおむね1%未満と予測されてはいるが、値下げすれば売り上げも低下する。しかも、原材料費や燃料費の高騰、電気料金の値上がりなどにより、各メーカーの支出も増えている。
自動車業界全体で賃上げの機運が高まっているとはいえ、財源の確保が難しい、賃上げに対し前向きに検討したくてもできない、そんな部品メーカーも少なくないだろう。