トヨタ「満額回答」で喜ぶのはまだ早い? 格差大きい自動車業界、末端への波及は望めるのか
トヨタ自動車は2023年春闘で、組合からの賃上げ要求に対し、満額で回答した。一見、喜ばしいことだが、自動車業界全体のことを考えると、手放しで喜べない面が見えてくる。
末端まで行き届かぬ対応

もちろんトヨタ自動車も、現状への対応を全く行っていないわけではない。
まず、トヨタと直接取引をしている1次メーカーのうち、1割から2割にあたる中小企業については、値下げ要請の対象外としている。
また、材料費などの高騰に対する価格転嫁や、エネルギー費高騰によるコスト増、増産に伴って発生した労務費などについては、これまでと同様にトヨタが一部を負担することが検討されており、これらは値下げ要請とは別の枠組みで交渉が行われるという。とはいえ、この交渉が「満額回答」になるとは想像しにくい。
さらに別の問題もある。トヨタ自動車が1次下請けに対しては交渉に応じる姿勢を見せている一方、トヨタ自動車の1次下請け企業やトヨタグループの企業が、自社の下請け企業からの原材料費やエネルギー費高騰の価格転嫁交渉に応じていないケースがあるのだ。
実際に2023年1月には、デンソーや豊田自動織機などが「下請け企業との取引価格にコストの上昇を適切に転嫁しなかった企業」として、公正取引委員会から会社名を公表された。