メルセデス「全車EV化宣言」の理由 躊躇する日米メーカーに先行 シフト加速を支える複数計画
充電ネットワークへの取り組み
同社は充電に関する標準化にも取り組む。「プラグ&チャージ」によって、認証や支払い処理のための煩雑な手続きなしで、プラグイン、充電、プラグアウトをすることができるようにする。プラグ&チャージは、2021年後半に発売されるEQSの発売と同時に開始される。
また、メルセデス・ミー・チャージは、すでに世界最大級の充電ネットワークであり、現在、世界各地に53万か所以上にAC/DC充電ポイントが設置されている。さらに、シェル社と協働し、充電ネットワークの拡大にも取り組んでいる。2025年までには、全世界1万か所以上の高出力充電ポイントを含む、ヨーロッパ、中国、北米の3万か所以上のシェル社リチャージ・ネットワークへのアクセスが可能になる見込みだ。また、欧州において複数のプレミアム充電ポイントの立ち上げも計画しており、最高水準の設備によるオーダーメイドな充電の体験を提供する。
一方で車両開発についても同社では、高速道路での通常走行時に100kmあたりのkWhを1桁(1kWhあたり6マイル以上)にすることで、実走行距離が1000kmを超える電気自動車「VISION EQXX」の開発を進めている。研究を進めるのはF1ハイパフォーマンスパワートレイン部門(HPP)のエキスパートを含む学際的チームであり、プロジェクトの歩みを加速させている。ワールドプレミアは2022年を予定。VISION EQXXで得られた技術的進歩は、新型電気自動車のアーキテクチャーへの応用も検討しているとのことだ。
EVの生産計画

メルセデス・ベンツは現在、EVのグローバルな生産ネットワークの整備を進めており、市場の需要に対応するペースで生産を拡大している。生産システム「MO360」に早くから投資してきたことが功を奏し、現時点ですでにバッテリーEVの量産体制が整っている。
早ければ2022年には、3大陸の7つの拠点で8モデルのEVが生産される見込みだ。さらに、メルセデス・ベンツAGが運営するすべての乗用車・バッテリー組み立て拠点は、2022年までにカーボンニュートラルな生産への切り替えが実施される。
また、さらなる生産効率の向上のため、バッテリー生産・自動化システムのグローバルリーダーであるドイツのGROB社と協働し、バッテリー生産能力とノウハウを強化する。この提携は、バッテリーモジュールやパックの組み立てに焦点を当てたものだ。
さらに、ドイツのクッペンハイムにバッテリーのリサイクル工場を新設し、リサイクルの能力とノウハウを開発する計画もある。操業開始は、公的機関との協議の結果に応じ、2023年を予定する。