メルセデス「全車EV化宣言」の理由 躊躇する日米メーカーに先行 シフト加速を支える複数計画
プラットフォームとパワートレイン
またメルセデス・ベンツは、具体的な開発計画についても公表している。まず2025年に3種類のEV専用プラットフォームを発表する計画だ。
1つ目は、中型から大型まですべての乗用車をカバーし、将来のEV車種ラインナップのプラットフォームとして、定量化可能なモジュールシステムを確立するもの。2つ目は、スポーツ系のAMG向けにパフォーマンスとテクノロジーを両立するプラットフォーム。3つ目は商用車用のもので、将来のエミッションフリー輸送やゼロエミッション都市の構築に貢献する。
また事業の垂直統合を進める。パワートレインの企画・開発・購買・生産を一手に引き受ける体制を整え、製造・開発における垂直統合のレベルをさらに高め、電気駆動技術を内製化する。その目的のもと、英国の電気モーター会社YASAの買収も行う。この買収によりメルセデス・ベンツは、次世代の超高性能モーターを開発するための独自の軸流モーター技術やノウハウを得ることとなる。これは自社製モーター「eATS 2.0」と同様、インバーターやソフトウェアを含むシステム全体のコストに焦点を当てた戦略や効率性のキーファクターとなる。
世界最大のNEV(新エネルギー車)市場である中国には、EVコンポーネントやソフトウェア技術に特化した数百社の企業・サプライヤーが存在しており、メルセデス・ベンツの電動化戦略を加速させる上で重要な役割を果たすことが期待されている。
バッテリー生産と先端技術
バッテリー生産に関しては、200GWh以上の生産能力を必要としており、すでに計画されている9つのバッテリーシステム工場に加え、8つのセル生産工場の建設を世界中の提携企業と共同で進めている。次世代バッテリーは高度に標準化され、メルセデス・ベンツの全自動車の90%以上に使用可能であると同時に、すべての顧客に個別のソリューションを提供できる柔軟性を備える。セルの製造に関しては、セルやモジュールの開発や効率的な生産のため、新たな欧州のパートナー企業と提携する。
セル生産によって、既存のパワートレインの生産ネットワークの変革の機会とする。最先端のバッテリーセル技術を継続的に組み込むことで、ライフサイクル中の航続距離を伸ばすことを目指す。次世代バッテリーでは、シラ・ナノ(バッテリー素材企業)などのパートナー企業と提携し、負極にシリコンとカーボンの複合材を使用することで、エネルギー密度をさらに高める。それにより、これまでにない航続距離を実現し、充電時間のさらなる短縮も目指す。
固体技術については、さらに高いエネルギー密度と安全性を備えたバッテリーの開発に向け、提携企業と協議を進めていくとした。