メルセデス「全車EV化宣言」の理由 躊躇する日米メーカーに先行 シフト加速を支える複数計画

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メルセデス・ベンツが、市場環境次第で2030年までにすべての自動車を電動化すると発表した。その背景と、EVシフト実現のために並行して世界規模で進められている複数の計画を解説する。

政策主導で競争力を強化

 メルセデス・ベンツがこのタイミングで全車EV化を宣言したのには理由がある。

 まず2021年6月、欧州議会で「欧州気候法」が採択され、欧州における二酸化炭素(CO2)削減目標が1990年比で55%削減に引き上げられることが確実となった。そして7月、その目標を達成するための具体的な政策パッケージ「Fit for 55」が欧州委員会(EC)から発表された。このなかで、2035年までに登録されるすべての新車をゼロエミッションにすることが想定されているのだ。つまりメルセデス・ベンツは、自らの意向とは関係なく全車EV化をこのスケジュールで進めざるを得ない状況なのである。

 このような急進的な政策の主導を、欧州の自動車産業界も諸手を挙げて歓迎しているわけではない。ACEA(欧州自動車工業会)やVDA(ドイツ自動車工業会)は、テクノロジーの進化を阻害する懸念や、100%EVであるだけでなく、産業全体のエネルギー構成がグリーンであることも重要だと表明している。

 ただ一方で、この高いハードルを、政策の助けを借りていち早く越えてしまえば、ためらっている日米の競合自動車メーカーたちを引き離して世界をリードする立場に立てるという目算があるのではないだろうか。

 加えて、EVのコア部品であるバッテリーは、エンジン以上にスケールメリットがモノをいう部品でもある。同じ仕様のものを大量に生産することでコストダウンが成立するという性質上、一気に生産体制を整えてしまい、後続がもたついている間にリードを広げたいという思惑が働いても不思議ではない。

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