コロナ禍の東京で全然増えなかった「自転車通勤者」 利用者40%増のロンドンと何が違ったのか?
ロンドンでは「自転車ブーム」継続

2023年4月に始まる「すべての自転車利用者のヘルメット着用努力義務化」に対し、SNSなどで賛否両論が飛び交っている。ヘルメット着用促進は、2021年5月に閣議決定された「第2次自転車活用推進計画」などで発案されたものだが、2020年にコロナ禍が始まって以来、ソーシャルディスタンス確保の観点から、国を挙げて自転車利用が推奨されてきた面もあり、安全性向上の点からも注目すべき動きではある。
では、コロナ禍で自転車利用者は実際に増えたのだろうか。「コロナをきっかけに自転車通勤者が増えた」とするアンケート結果もあるが、自転車総合研究所所長の古倉宗治氏は、「自転車駐車場整備センター」のウェブサイトに掲載した2023年2月15日付のコラムで、東京都心5区において「コロナは自転車通勤を拡大しなかった」としている。
古倉氏は、2020年10月の国勢調査のデータを10年前のデータと比較して、自転車通勤・通学者数が区によって増減があり、増えた区も小幅な増加にとどまることを指摘。その背景として、「(自転車の)走行環境や駐輪環境が緊急対策として用意されたわけではなかった」ことなどが考えられるとしている。
一方、イギリスのロンドンでは、パンデミック前と比べ2022年11月時点で自転車利用者は40%増である。自転車利用者全体の3分の2が通勤目的とされる(2023年2月24日、『CITY A.M.』)が、パンデミック中にブームが起こった理由、それが継続しているのはなぜだろうか。
公共交通機関での新型コロナ感染を心配するとともに、スポーツジムが閉鎖されて運動できなくなった市民には、代替交通手段と運動不足を解消するツールが必要だったとの見方がある(2022年12月8日付、『CENTRE FOR LONDON』)。
また、コロナ禍が収束した後も継続しているのは、ロックダウンでの公共交通機関の利用者制限や度重なるストで、改めて自転車の便利さを痛感した人がいた側面があるだろうし、もともと通勤の交通費が支給されない給与体系のもと、運賃値上げを含む物価高に対する節約目的もあるだろう。
それらを支えるのがロンドン市と交通局の交通戦略である。