コロナ禍の東京で全然増えなかった「自転車通勤者」 利用者40%増のロンドンと何が違ったのか?

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コロナ禍で、自転車利用の増加がそれほどでもなかった東京と比べ、ロンドンでは40%も増加したという。なぜ日英で差がついたのか、ロンドンの状況を解説する。

マイノリティーが新たな利用者に

ロンドンバスと自転車(画像:写真AC)
ロンドンバスと自転車(画像:写真AC)

 2021年から2022年にかけ、自転車に乗るロンドン市民の多様化が見られたという。ロンドンでは、EU離脱後も移民が4割を占める。自国では自転車に乗ることが一般的でなかった人もいる。ロンドン交通局の調査によれば、アフリカ系やアジア系の人たちは、欧米系市民よりも自転車に乗っていなかった。過去12カ月に自転車に乗った人が全体で27%とすると、アフリカ系が24%、アジア系が25%だったという。

 2022年には、これまで自転車に乗っていなかったアフリカ系の49%とアジア系の46%の市民が利用を検討するようになった。ロンドン交通局は、黒人メディアでのプロモーションの結果も一因と考えている。これらを後押しするように、女性や少数民族向けの自転車メンテナンス教室、聴覚障害者向けのサイクリングやウオーキングのセッションなどが企画された。

 日本人の視点から、イギリスでこれまで自転車利用があまり進んでいなかった理由を考えると、日本でも自転車は原則歩道を走ってはいけないが、イギリスではそれがより徹底されている点もありそうだ。自転車レーンがある所でも、大型トラックや2階建てバスと並走するのは勇気がいる。シティーバイクの利用者が多いので、自転車全体としてスピードが速いこともある(なお、ヘルメット着用者が多い印象だが、義務ではない)。右折や左折でハンドサインをする必要があり、難しく感じる人もいるはずだ。

 盗難の心配も大きい。ロンドンでは、2021年は2万1000台以上の自転車が盗まれた(2022年3月22日付『BBC』)。自転車ラックに防犯ロックを使って自転車をつないでも、そのラックが壊されて自転車が盗まれることもある。

 そのため、自転車は家の中に保管(バスルームなどの場合もある)するのが一般的である。鉄道も路線によっては自転車持ち込みOKな場合があるので、出先で駅周辺に置いておかない人もいる。

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