ネットスーパーをさんざん使っておきながら、スーパーの「物流事情」に無関心な一般利用者たち

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スーパー各社の業績は改善されていない。ネットスーパーの売り上げが大幅に増加しているのであれば、「ネットスーパーのおかげで利益が増えた」という声が出てもおかしくない。しかしそのような発表は皆無である。

利益率が低下している要因

ショッピングカート(画像:写真AC)
ショッピングカート(画像:写真AC)

 イオンリテール、イトーヨーカ堂、ライフコーポレーションなどの大手スーパーは、一部地域を除いて大半の店舗でネットスーパーを展開している。スーパー各社トップからは、「ネットによる販売を一層強化していく」との発言が多く聞かれる。実際、ネットスーパーの売り上げはイオンリテールで前年比2割増を実現、ライフコーポレーションは今期、昨年比倍増を目指している。

 一方、スーパー各社の業績はあまり改善されていない。今期の営業利益率は前年より低下する見通しというところも多い。利益率が低下している要因として、商品仕入価格の上昇や光熱費の増加が挙げられている。

 確かにそれらの影響は大きいが、ネットスーパーの売り上げが大幅に増加しているのであれば、「ネットスーパーのおかげで利益が増えた」という声が出てもおかしくない。しかしそのような発表は皆無である。むしろ、「ネットスーパーの収益化が課題」という発言が目立つ。

 ネットスーパーの利益が出ない最大の要因は、

「物流コストの負担が大きい」

ためだ。

 物流コストには、トラックで配送する運賃だけでなく、店舗やセンター(ダークストアと呼ばれるネット販売専用の出荷センター)での

・ピッキングコスト
・検品コスト
・梱包資材費

などの運営費用が含まれる。

 送料を有料化して顧客から徴収しても、その金額だけで物流コストを賄うことは不可能なのだ。スーパーによっては、5000円以上や6000円以上などといった、一定金額以上の購入に対しては送料を請求しないところもある。

 スーパーの粗利益率は

「20%程度」

であり、仮に5000円の売り上げがあった場合、粗利益の金額は約1000円となる。そこから人件費や店舗の運営コストなどの販管費が差し引かれて最終の利益となる。

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