ネットスーパーをさんざん使っておきながら、スーパーの「物流事情」に無関心な一般利用者たち
1件当たりのコストは「300~600円」

ネットスーパーでは、さらに物流コストをスーパー側で負担しなければならない。消費者が店舗で商品を購入する場合は、
・商品のピッキング
・梱包(買い物袋に入れる作業)
・配送(自宅まで持ち帰る行為)
はすべて消費者側で行う。いわば、スーパー側のコスト負担はゼロである。
ところが、ネットスーパーではそれらの行為をすべてスーパー側で行う必要がある。ピッキングや配送は人件費などのコストが掛かる。配送費だけを取り出してみても、仮に1台のトラックが1日50件程度配送を行った場合、1件当たり200~400円程度の費用となる。
さらにピッキングなどのコスト負担が発生するため、ネットスーパーのトータル物流コストは1件当たり
「300~600円」
かかることになる。配送先が広域にまたがり、配送密度が低い場合はさらにコスト負担が増す。
これを粗利益の約1000円で賄わなければならず、それ以外の販管費を考慮すると、ネットスーパー事業はほとんど利益が出ないか、
「実質赤字」
となってしまっているのだ。
ネットスーパー拡充の理由

では、なぜスーパー各社はネットスーパーを拡充しようとしているのか。ひとつ目は、将来的に物流コストが低減される可能性を見いだしていることがあるだろう。
例えば、ネットスーパー専用のセンターを設立し、そこで物流業務を集約する取り組みである。イオンが千葉市に、イトーヨーカ堂が横浜市にネットスーパー専用のセンターを2023年中に稼働させる。
両社ともピッキングや搬送、梱包などにロボットを活用し、人手での作業を極力少なくする計画であると発表している。それによって人件費を大幅に低減することが可能となるであろう。
しかし、設備費はゼロではない。詳細は公表されていないが、ロボット等の投資額と人手で作業を行った場合の人件費を比較し、コストが半分程度で済むなどといった大きな効果を見込むことは現実には困難だ。
また、トラックでの配送業務はロボットに置き換えられない。その部分のコストは今まで通り発生する。