米国の強権排ガス規制にホンダ屈せず 対応不可能を超えた画期的技術「CVCC」の熱気を取り戻せ
米国が付きつけた大気浄化法の大幅改正に敢然と立ち向かったホンダ。その軌跡をご存じか。
大気浄化法の改正
1960年代後半、世界の自動車産業はハイパワーを売りにした高性能車がわが世の春を謳歌(おうか)していた。
特に米国ではその傾向が強く、400hpオーバーの排気量7リッターV型8気筒エンジンといった、レースエンジンに匹敵するスペックを誇るものが多くのモデルの最強オプションとして用意されていた。
この手のエンジンは基本的には圧縮比が高く必然として有鉛ハイオクタンガソリンを要求していたこともあり、相応の排ガスと鉛化合物を大気中に放出していた。そしてこのことが光化学スモッグなどの深刻な大気汚染問題の引き金となっていたということである。
1970年、米国では従来からの大気浄化法が上院議員エドマンド・マスキーの提案に沿う形で大規模な改正が実施されることとなった。これがいわゆる「マスキー法」と呼ばれたものだ。
その骨子は、自動車が排ガスとして排出する大気汚染物質の中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物のいずれもそれまで許容されていた量のおおむね1/10にするという極めて過酷なものだった。
なお、その規制内容が過酷だったことから法律の全面的な施行は1975年度後半に市場に投入される1976年型まで猶予されることとなった。それまでに自動車メーカーは規制をクリアできるエンジンの開発が義務づけられたということである。
この決定に対して世界中の自動車メーカーの開発部門はまさに寝耳に水の大混乱にさらされることとなった。有害物質低減の研究はそれぞれなされていた一方、1/10という数値は余りにも厳しく、大メーカーにおいても
「既存の技術ではそのクリアは不可能」
という意見が続出したこともあり、その行方は混沌(こんとん)となっていた。