「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」 川端康成の名作に登場するトンネルの場所をご存じか? 東京2月雪の夜に想う

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2月10日、東京に雪が降り23区には大雪警報が発せられた。数年に一度の大規模な積雪となると、多くの人が帰宅を急ぐとともに雪にまつわるエピソードや作品を語り出すが通例だ。

ノーベル賞受賞作家による名作

在りし日の「シーハイル上越」(画像:写真AC)
在りし日の「シーハイル上越」(画像:写真AC)

 2月10日、東京に雪が降り23区には大雪警報が発せられた。数年に一度の大規模な積雪となると、多くの人が帰宅を急ぐとともに雪にまつわるエピソードや作品を語り出すが通例だ。

 そんななかで誰もが一度は口にしたことがあるのが、1968(昭和43)年にノーベル賞を受賞した文豪・川端康成の『雪国』の冒頭ではなかろうか。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

の一節である……。

『雪国』の書き出しは、その一節だけで舞台である雪国の情景が思い浮かぶ名文だ。でも、その先にはどう書かれているのだろうか。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ呼ぶように、「駅長さあん、駅長さあん」明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた」

 川端は、実にさまざまな言葉を使って風景を描写する書き手である。『雪国』と並ぶ代表作である『伊豆の踊子』でも冒頭は

「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た」

となる。県境のトンネルを「国境の長いトンネル」と記したり急な雨を「雨脚」にかけて「追って来た」と描写するなんて、なかなか思いつくものではない。

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