「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」 川端康成の名作に登場するトンネルの場所をご存じか? 東京2月雪の夜に想う

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2月10日、東京に雪が降り23区には大雪警報が発せられた。数年に一度の大規模な積雪となると、多くの人が帰宅を急ぐとともに雪にまつわるエピソードや作品を語り出すが通例だ。

川端康成が執筆した旅館とその歴史

旅館「雪国の宿 高半」(画像:(C)Google)
旅館「雪国の宿 高半」(画像:(C)Google)

 今「国境」には、都合3本のトンネルが通るわけだ。国境を越えた、はるか向こうにあるはずだった雪国も、今では東京駅から新幹線で1時間19分で到達する。旅情を味わうには、いささか短い。

 その雪国の玄関である越後湯沢駅には、川端康成が執筆した旅館「雪国の宿 高半」が今でもある。この旅館と新幹線の関わりも複雑だ。新幹線建設が決まった頃の当主だった高橋半左ェ門は、新潟県議で越後湯沢駅の誘致に尽力した人物として知られている。

 いざ駅の設置が決まりルートが明らかになり、半左ェ門は驚いた。新幹線のトンネルが旅館の真下を通るルートになっていたからだ。これでは工事で旅館が倒壊しかねないと、今度は日本鉄道建設公団にルート変更を求めて、民事訴訟を起こすことに。しかし、数年後には和解した。

 町の振興に新幹線は欠かせないのは明らかで、開通を遅らせてはならないという思いがあったからだ。こうして、現在の旅館は川端が『雪国』を執筆した宿とともに「新幹線が見える旅館」として愛されている。

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