F-22ラプターが撃墜した「中国気球」 その侵入目的は何か? 偵察にしては低い合理性、米右派シンクタンクも「気象観測気球」の論説

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中国政府は、偵察気球とされる飛行物体が自国のものであることを認めているが、あくまで「民間の気球であり、不可抗力により米国空域に意図せず侵入した」と説明した。

中国の目的はなにか

CSISの論説「中国のスパイバルーン。空は無限大」より(画像:CSIS)
CSISの論説「中国のスパイバルーン。空は無限大」より(画像:CSIS)

 中国政府は、今回の気球が自国のものであることを認めているが、あくまで

「民間の気球であり、不可抗力により米国空域に意図せず侵入した」

と説明した。この釈明はパワーズのU-2がソ連で撃墜されたときの米国と同じで、中国も過去の米国による行為を意識しているだろう。

 しかし、人工衛星の発達した今日、高高度気球による偵察活動を行うことは、あまり合理性がないようにも思われる。

 太陽光パネルによるエネルギー供給があっても、偏西風(ジェット気流)や高高度の希薄な大気の中で、気球を正確に偵察目標へ誘導することは極めて困難である。また、気球がどこかに落下するか、今回のように撃墜されれば、すぐに偵察機材の詳細は明らかになり、動かぬ証拠を握られてしまう。

 こうしたことから、米国の右派シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)でさえ

「最も可能性が高いのは迷い込んだ気象観測気球である」

とした論説を発表している。もしそうであったとしても、米国にとって看過しがたい事態であることに変わりはないし、中国政府はこうした事態に至る前に詳細を説明するべきであったことは言うまでもない。

 米中の軍事的緊張が高まるなか、相互不信を拡大させないためには、互いの活動に透明性が必要である。無用に緊張をあおることは避けるべきだが、撃墜した気球の分析を進める一方で、中国に対しては十分な説明と再発防止を要求する必要があるだろう。

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