F-22ラプターが撃墜した「中国気球」 その侵入目的は何か? 偵察にしては低い合理性、米右派シンクタンクも「気象観測気球」の論説

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中国政府は、偵察気球とされる飛行物体が自国のものであることを認めているが、あくまで「民間の気球であり、不可抗力により米国空域に意図せず侵入した」と説明した。

高高度防空の難しさ

米国が撮影した「ふ号」(画像:米国政府)
米国が撮影した「ふ号」(画像:米国政府)

 高高度(地上から7、8000mから1万m前後までの高さ)を飛行する航空機の迎撃は、昔から困難な課題であった。第2次大戦中も、高度1万m(約3万ft)で飛行するB-29に対し、排気タービンを持たない日本の戦闘機は無力であった。

 戦後はジェット機の時代に入り、対空ミサイルが発達したことによって、高高度迎撃の問題は徐々に解決されていったが、レーダーによる探知や追尾が困難な気球となると、相変わらず対空ミサイルでの撃墜は困難である。

 また、気球が飛行していた6万ft以上の高度は、通常の戦闘機の行動可能範囲を超えている。

 米空軍の公表データでは、F-35A戦闘機の実用上昇限度(Service Ceiling)が約5万ft、F-15Cで約6万ftとされているようだが、これはあくまで最低限の上昇率を保(たも)てる高度の限界にすぎない。この限界に近づくと、エンジンの燃焼が難しくなるだけでなく、大気が希薄なために操縦舵面は効きを失い、揚力も限界に達しているので旋回すらおぼつかなくなる。

 こうしたことから、米国は世界でも最高の高高度性能を持つ戦闘機F-22によって、今回の事態に対処した。今のところ、5万ftを越える高度で実用的な飛行能力を持つ戦闘機は、世界中を見渡してもF-22以外にはないだろう。F119エンジンの優れた性能特性と、空力的な舵面に頼らず姿勢を制御できる推力偏向機能が主な理由だと思われるが、とにかくF-22の高高度性能は群を抜いている。

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