F-22ラプターが撃墜した「中国気球」 その侵入目的は何か? 偵察にしては低い合理性、米右派シンクタンクも「気象観測気球」の論説

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中国政府は、偵察気球とされる飛行物体が自国のものであることを認めているが、あくまで「民間の気球であり、不可抗力により米国空域に意図せず侵入した」と説明した。

冷戦の記憶

SR-71(画像:NASA)
SR-71(画像:NASA)

 米国本土上空を外国の気球が飛行すれば、たとえ無人機であっても領空侵犯に当たるはずだ。しかし厄介なことに、領海や領土の問題とは異なり、領空には高度の規定が明確ではない。

 一般論として

「宇宙空間よりも下」

は領空であり、国際航空連盟は高度100km(カルマン・ライン)を超えた先が宇宙空間であるとしているが、これを「領空」の境界とした規定があるわけではない。

 東西冷戦の時代、東側に対する技術優位を謳歌(おうか)していた米国は、ソ連や中国など共産圏諸国の領空を、迎撃が困難な偵察機で好き勝手に侵犯してきた。戦闘機やミサイルで迎撃できなければ、いくら領空を主張しても実効支配は不可能で、高高度飛行できる偵察機を持つ国は、

「他国の空に侵入し放題」

だというわけである。

 米国の高高度偵察が世界中に知られた有名な事件として、ソ連領内でU-2偵察機が撃墜された「ゲーリー・パワーズ事件」がある。米国はそれまでも、ソ連側の抗議を無視し、繰り返し領内に侵入して写真偵察を行っていたが、1960年5月1日にソ連のミサイルがU-2の撃墜に成功し、米空軍と中央情報局(CIA)による偵察飛行の証拠が白日の下にさらされたのである。

 中国に対しても、CIAは台湾にU-2を供与し、台湾人パイロットによる偵察が行われていた。1960年代を通じて実施されたU-2による中国領内偵察飛行は、ニクソン大統領が訪中した1972年までに200回以上が行われたとされており、5機のU-2が中国に撃墜されている。

 これらの事件以降も、嘉手納を基地とした高速機SR-71による偵察飛行は1980年代まで続き、偵察衛星が本格的に実用化されるまで、米国機は他国領内への侵入を繰り返していたのである。

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