「3歳児直撃」で死亡の悲劇も なぜ大型トラックの車輪脱落事故は防げないのか?

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大型トラックのタイヤが外れ、転がっていくニュースの映像を見たことはないだろうか。過去には死亡事故もあった車輪脱落事故について、原因と対策を考える。

規格変更が影響か?

年度別の大型車の車輪脱落事故発生件数(画像:国土交通省)
年度別の大型車の車輪脱落事故発生件数(画像:国土交通省)

 車輪脱落事故の多くが、左の後輪が外れる現象である。左側通行の日本の道路事情だから左が外れるという意見もある。同じ左側通行のイギリスでも、英国運輸省は「不注意なトルク管理は生命を奪う(CARELESS TORQUE COSTS LIVES)」と題して、注意喚起をしている。

 脱落事故の原因究明は現在も続けられていて、そのひとつとして考えられるのが、大型車のホイールの規格が変わり、車軸へ取り付けるホイールナットの取り付け方式が、日本産業規格(JIS)から国際標準化機構(ISO)の規格に変わったことだ。規格変更以降、事故が増えたためである。

 ISO規格への流れは、世界的なシェアで考えた場合、ISO規格とJIS規格ではマーケットの差が大きすぎるので、自然な流れではある。日本製のトラックやバスが世界で評価を受けていても、タイヤやホイールがJIS規格だと世界での販売競争では戦えない。また、アフターマーケットでの市場でも、走っている限り必ず必要となる消耗品のタイヤがISOとJISで取り付け方式が違うため、日本国内専用の車両とホイールとタイヤになってしまう。整備性や部品点数が少なくなるISO規格のホイールが普及するのは自然な流れともいえよう。

 ただし、ISOホイールの車両が多くなってISOホイール装着車両の事故の数が増えたとはいえ、現在もJIS規格の車両が混在して走っている中、確定的な要因という結論には至ってはいない。

 このJISとISO、ホイールナットについて簡単に説明すると、ISOではボルトナットは右に回せば締まる。一方、JIS規格では「進行方向に締まる」ようになっている。車両右側では右回りに締まり、左側のナットは左回りに締まるのだ。このことから、左側のISOホイールでは回転方向に緩むことになり、それが要因のひとつと考えられている。また、タイヤ交換時の点検不良や定期点検での整備不良なども原因と言われている。

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