EV用バッテリー世界最大手CATLと「猫EV」の長城汽車、10年間の戦略的提携の狙いは
一方の長城汽車はマーケ能力を発揮し「猫EV」を連発
一方の長城汽車は、国営系メーカーが多数存在する中国では少数派の民営系でありながら、近年のSUV人気に乗じて、機転の利く商品企画によってSUVモデルを大量投入し、中国でのし上がったメーカーだ。同じく民営系の吉利汽車と並んで人気のあるメーカーでもある。
傘下には、HAVAL・WEYといったSUVで知られるブランドを運営しており、販売台数を急速に増やしたが、販売が極端にSUVに偏っていたため、中国における近年の新エネルギー車規制で厳しい状況になると見られていた。
自社モデルのポートフォリオの見直しを迫られた長城汽車は、2018年、新たにEV専用ブランドの「ORA」を作り、そして2019年、100万円で航続距離300kmを実現することで話題になった「R1」を発表し、ブランドの早期立ち上げに成功した。
それからも長城汽車は機転が利くマーケティング能力をEVブランドのORAでも存分に発揮しており、「R1」が女性からの支持を得たことを受けて、車名に“猫”が付くシリーズを展開。
R1に「黒猫」という愛称を付けてリブランディングすると、続いてボクシーなコンパクトハッチバックEV「白猫」を発表。続いて、丸目のライトと尻下がりのフォルムで60年代を想起させる「好猫(Haomao)」、そして、かつてのVWビートルにそっくりでありながら4ドアで実用性を持たせた「朋克猫(Punk Cat)」、さらに、ポルシェ「パナメーラ」をデフォルメしたようなカッコかわいい「閃電猫(Lightning Cat)」を連発。この3年のあいだに“猫”シリーズを5モデルも発表した。
加えて長城汽車は海外展開にも熱心なメーカーであり、EVを足掛かりに東南アジアや欧州市場への進出を表明している。このような状況から、世界中で奪い合いになっているEV用車載バッテリーの確保は重要課題であり、CATLとの今後10年にわたる提携の背景となっているものとみられる。
CATLと長城汽車は、このような長期的な戦略的提携のために両社協力し、相互利益とWin-Winの結果を達成し、新エネルギー自動車産業の発展に貢献していくと表明している。