車はなぜ「クルマ」とカタカナで書くのか? 「車」「くるま」じゃダメなのか、その意外な歴史をたどる
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当たり前に認識されたのは80年代

「車 or クルマ」、いったいどちらの表記が正しいのか――。
クルマ表記は現在、雑誌やインターネットメディアなどで当たり前のように使われている。
単に漢字を避けるなら「くるま」でいいはずなのだが、なぜかカタカナが普及している。特に自動車雑誌などでは、クルマが当たり前となっている。
この表記はいつから使われるようになったのか。クルマ表記が、当たり前に認識されるようになったのは、
「1980年代」
と考えられている。
当時、乗用車は若者にとっての必須アイテムとなり、若者向け雑誌を始めとする多くの媒体がよく人気の乗用車を特集していた。バブル景気の頃には、雑誌の懸賞で乗用車が賞品に登場することもあった。
こうしたことからも、この頃の乗用車熱がいかに高かったかがわかる。ちなみに懸賞はその後、高額ゆえに問題化してあえなく消滅した。
表記は60年代には既に存在

ただ、乗用車の記事が多かったのは事実であるものの、クルマ表記の発祥ではない。なぜなら、1980年代には新聞でも当たり前にクルマ表記を使っているからだ。どの記事が初出なのかは、今となっては判然としない。では、もっと古い時代に使っていた人がいるのだろうか。
過去の資料を調べてみたところ、クルマ表記を使っている最も古い例は『週刊新潮』1960(昭和35)年11月14号だった。実に今から63年前のことだ。同号には
「クルマは這うよりもおそく どうすりゃいいんだ東京の交通ラッシュ」
という記事が登場している。1980年代よりはるか以前から、クルマ表記は使われていたのだった。
ただ、その後の動向を追ってみると、当時から定着していたわけではなく、表記が結構揺れる(バラつく)時代が長らく続いていた。『サンデー毎日』1977年1月16日号では、
「ドキュメンタリー新くるま社会」
「座談会新クルマ社会は来るか」
と、同号でふたつの表記が混在している。