日中関係冷え込みで、日本企業の関心は「ヒト」から「モノ」へ サプライチェーンの日本回帰は加速するのか?
ビザ発給停止の真意は?

また、有事になる前でも日中関係が冷え込めば、同様の措置を取ってくる可能性が十分にある。2010(平成22)年9月の尖閣諸島での中国漁船衝突事件の際、中国は報復措置としてレアアースの対日輸出を突然停止し、2023年に入っても、ゼロコロナ政策終了によって中国で新型コロナウイルスの感染爆発が起きる中、日本の水際対策強化に対し、中国は突然ビザ発給停止という行為に打って出た。
これについては日本国内でも動揺が走っているが、現在の台湾情勢や米中対立、そして日中関係の中に今日の力関係など政治の側面からみれば、今回のビザ発給停止もその延長線上で考えられる。
今日、米国は半導体など先端分野で脱中国、国内回帰、また同盟国や友好国とのサプライチェーン強化を進めているが、日本も経済安全保障の観点から米国との結束を強めようとしている。中国は日本のそういった方向性を強く懸念しており、経済分野での日米切り離しを狙っている。今回のビザ発給停止という措置は、それによって日本の対応をうかがう狙いもあったように思われる。
このように、2023年に有事へと発展する可能性は低いと思われるものの、台湾を巡る緊張は続いており、米中対立も影響し、それらによって日中関係が冷え込んでいく可能性がある。今日、国家間の紛争の主たる戦場は経済、貿易の領域であり、緊張が長期化すればするほど、企業にとっての「モノの安全」が脅かされることになる。
こういったことを懸念してか、大手自動車メーカーのホンダは2022年8月、国際的な部品のサプライチェーンを再編し、中国とその他地域を切り離す方針を明らかにした。また、キヤノンや日立製作所はこういったリスクに対応するため、中国にある拠点やサプライチェーンを日本へ回帰させたり、第三国へ移転させたりする方針を明らかにした。おそらく、2023年も日本企業の中ではこういった動きがさらに進むことだろう。