BEV普及の欧州 まずは「充電インフラ」整備ありきも 日本はなぜか後回し、いったいこの差は何なのか【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(10)

キーワード :
, , ,
欧州では、電気自動車のみならず他のe-Mobilityも含めた包括的な充電インフラ整備計画が進んでいる。その紹介とともに、充電インフラの在り方について考えてみる。

TEN-Tネットワークを有効活用

電気自動車の充電設備(画像:写真AC)
電気自動車の充電設備(画像:写真AC)

 欧州にてインフラを語る時、最もベースとなるのが、欧州委員会が1990年に採択したTEN-T(Trans-European Transport Network)ネットワーク、日本では「欧州横断輸送ネットワーク」と呼ばれるものである。これは、欧州に点在するネットワークを統合し、統一された効率的な交通インフラ構築を目指すものであり、鉄道、高速鉄道、道路、空港、水上交通、マルチモーダル等が含まれている。

 2022年6月に、欧州理事会は「代替燃料インフラ指令の改訂」として、2030年までの包括的な充電インフラ整備計画を承認した。これは、約1年前に、欧州委員会から総合的な規則パッケージである「Fit for 55 Package」のひとつとして提案されたものである。その後、欧州議会でも議論され今回決着した。

 今回の包括的な充電インフラ計画は、TEN-Tネットワークを基本として、その上に自動車および他のモビリティ(船舶、航空機など)の充電もしくは水素インフラを設定している。その背景として、全ての交通手段は多様な代替方法を考慮したひとつの制度で対応すべきとの考え方があるようだ。その中で筆者が重要かつ日本でも参考になると思われるものを3つ紹介したい。

(1)充電インフラの設置基準
・小型車専用の充電ネットワークは進行方向ごとに配置され、その間の距離は最大60km、大型車専用では、その間の距離は最大100kmとする。
・小型車専用でも、加盟国は充電池間の距離に関する適切な標識が配置されていることを条件に、年間一日平均交通量が4000台未満のTEN-T道路に沿っては、100kmまでの充電池の距離を許容する。
・充電ステーションは、TEN-T道路上、もしくは最寄りの出口から3km 以内にあること。
・水素ステーションは、TEN-T に沿って最大 200kmの距離で配備されること。
・水素ステーションは TEN-T道路上もしくは最寄りの出口から10km 以内にあること。

(2)船舶および航空機に関する充電インフラ設置基準
・TEN-T海上港では、航行中のコンテナ船および旅客船に対する最低限の陸上電力供給を確保すること。
・TEN-T内陸水路港では、内陸水路船への陸側電力供給設備を少なくとも1 つ確保すること。
・岸壁に停泊中の船舶の中で、1隻あたりの排出量が最も多いコンテナ船と客船については、優先的に陸上での電力供給を行う。
・空港で航空機が静止している時、航空燃料に代わって外部からの電力供給が可能となること。

(3)充電インフラのネットワークに関する基準
・充電・給油ポイントの運営者または所有者は、静的および動的の「デジタル接続された充電ポイント」データを利用できるよう保証すること。
・「デジタル接続された充電ポイント」とは、リアルタイムで情報を送受信でき、電力網および電気自動車と双方向に通信でき、充電の開始・停止や電力量の測定など、遠隔で監視・制御できること。

全てのコメントを見る