自転車運転、ヘルメット無しでは致死率「1.6倍」だった! 4月の着用「努力義務化」から見える交通行政の怠慢ぶり 利用者はまず意識向上を

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2023年4月、すべての自転車利用者に対しヘルメットの着用が努力義務化される。このような非現実的(とあえて言おう)な法改正の裏には、自転車事故をなんとか減らしたいという必死の思いがある。

オワコン化している自転車の交通ルール

13歳未満は現在も努力義務(画像:写真AC)
13歳未満は現在も努力義務(画像:写真AC)

 モータリゼーションが急速に発展した1960年代、自転車は自動車の交通を妨げる邪魔者とされた。詳しい経緯や課題は省略するが、結果、自転車は車道から歩道へと実質的に追いやられた。だがこれは歩行者に対する交通事故の増加や、交通ルールの矛盾や混乱を生み出した。国は、2008年に道交法を改正、自転車は車両であるとの立場をあらためて強調することで、無法化状態にあった自転車の交通ルールを整備しようとし始めた。

 だが、40年以上もグダグダだった自転車に関係する交通ルールや、自転車利用者の交通ルール順守意識が、たった一回の法改正で正されるわけもない。

 今回、とっぴにも思える「すべての自転車利用者におけるヘルメット着用努力義務化」という道交法改正は、長年にわたる国の交通行政における怠慢を、今になって必死に取り繕おうとするあがきのひとつであると考えるべきだろう。

 自転車の安全対策として期待される施策のひとつに、自転車通行帯の整備がある。と言うか、自転車の安全対策を訴える人の中には、自転車通行帯の整備こそが、自転車交通の明るい未来であると断言してはばからない人も少なくない。

 その考えを否定するつもりはないが、現実的ではない。少子高齢化が進み、税収のよりどころとなる人口が減少し、また経済状況も芳しくない日本に、新たに自転車通行帯の整備を進める原資はないからだ。そもそも時間だってかかる。自転車利用者の交通事故は、今この瞬間にも発生している。

 国道の総延長は6万6000km以上ある。さらに、都道府県道および市町村道の総延長は、120万kmを超える。すべてとは言わず、1割に自転車通行帯を整備するにも、多大な投資と、膨大な時間がかかるだろう。

 今後、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems=先進運転支援システム)を搭載したクルマ(※乗用車だけではなく、トラック、バスも含む)はさらに増えていくし、安全性もさらに向上していくだろう。だが、自転車においては、ADASのような安全対策支援装置の普及や発展は望みにくい。

 ここは、やはり自転車利用者、つまり私たち一人一人が、交通ルールをきちんと順守し、交通安全に務めるしかないのだ。

 今回のヘルメット着用努力義務化について、守る人はどれほどいるのだろうか。有名無実化しないでほしいものだ。

 繰り返すが、これまで40年以上にわたり、無法状態にあった自転車の交通ルールを正していくのは、とてつもなく難しい。

 すべての自転車利用者に対するヘルメットの着用努力義務化は、今までのツケを取り戻すための第一歩となるのだろうか。

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