三陸鉄道の命運を握るのは「JR東日本」との連携だ! 『あまちゃん』頼みを超えて、さらなる高みへ到達できるか
列車と駅そのものが観光地

三陸鉄道の特長のひとつとして、利用客目線を重視していること。ユニークな施策で人々のココロをつかむ。その筆頭といえるのは、
「定期列車でありながら、乗っている最中に観光が味わえる」
ことだ。基本的に団体客が見込める日中時間帯で行われる。
車内観光としては、北リアス線の安家川(あっかがわ)橋梁、大沢橋梁、南リアス線の唐丹(とうに)~吉浜間では、徐行や一時停止して、列車内から眺める雄大な太平洋を1秒でも長く楽しめるようにしている。SNS全盛の昨今だと、“インスタ映え”の撮影もできるのだ。
また、“観光地化”した駅もある。北リアス線の堀内(ほりない)駅はNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の北三陸鉄道袖が浜駅の舞台で、放送中から注目を集め、“聖地巡礼”と化していた。当時、三陸鉄道は数分停車して記念撮影ができるサービスを展開し、乗客から好評を博した。
放送終了後、ホームに「袖が浜」の駅名板を設置し、記念撮影スポットを演出。数分の停車中、いったん降りて撮影を楽しむ乗客も多い。ホームからでも太平洋が望めることもあり、“絶景の駅”ともいえる。
南リアス線は恋し浜駅で、こちらも日中時間帯は数分停車する。開業時の駅名は小石浜だったが、2009年7月20日、現駅名に改称された。駅名板は特別仕様のほか、遠目ながら太平洋も望める。恋し浜ホタテの貝殻に願いごとを書き、駅の待合室につるす絵馬掛けが人気で、恋愛成就の願掛けスポットと化した。
恋し浜はホームがひとつ、線路もひとつしかない駅ながら、『JR時刻表』誌(交通新聞社刊)では、主要駅として扱い、到着時刻と発車時刻を記載している。“聖地巡礼”を暗示しているといってもよい。
日中時間帯の2両運転は「合理的」

列車や駅を観光地にしたことで、旅行代理店の団体ツアー客の利用も多い。ただ、三陸鉄道は大人数でもない限り、団体専用列車を運転しないようである。
例えば、久慈12時07分発の盛行きワンマンカーは2両で運転され、筆者(岸田法眼、レイルウェイ・ライター)が2022年9月に乗ったところ、一般客と団体ツアー客が“混乗”していた。すべて自由席なので、座席は早い者勝ちだ。
団体ツアー客が普代で下車すると、車内はガラガラとなり、宮古に到着。今度は下校の高校生が乗車し、車内が再びにぎやかになる。このため、3両に増結する必要もない。
最初から2両運転することで、区間ごとのニーズに対応できるのだ。加えて、三陸鉄道は気動車で運転するので、必要な燃料も最小限で済む。