「臨海地下鉄」構想、都主導で中央区そっちのけ? 現場からは「TX接続言及なし」の戸惑い、そもそも都バス増発が先ではないのか
深刻な最寄り駅の混雑化

中央区が「2040年代では遅すぎる」と考えるのは当然である。なぜなら、現在の交通網では対応しきれない臨海部の人口増は、もう間もなく起こるからだ。
1万人以上の総人口を想定する東京五輪選手村跡地「晴海フラッグ」は、2024年に入居開始を予定している。総戸数2786戸の「パークタワー勝どき」は2023年の完成予定だ。
最寄り駅は都営大江戸線の勝どき駅だが、かねてよりマンション急増で駅の混雑化が深刻になっており、ホームを増設している。2019年から2面2線で運用しているが、まだ広いとはいえない。
パークタワー勝どきの入居開始後の混雑を避けるために、マンション出入口から直結する地下道も工事中だが、晴海フラッグと併せて駅と建物周辺の混雑化が深刻になるのは必至だ。
また、銀座や東京駅方面への通勤・通学客のためには、現在の晴海埠頭(ふとう)と東京駅とを結んでいるバスの大幅増発も求められる。つまり、対応は進めているものの
「2040年に地下鉄が完成しても間に合わない」
というのが中央区の本音なのだ。
「都営バスの増発が今後必要なことはわかっていますが、現状はどのくらい増やすか都交通局と話し合っているところです。始めてみないとわからない部分も多いので、早めの対応が必要だと思っています」
倉庫と空き地しかなかったあの勝どき・晴海は、わずか20年あまりで莫大(ばくだい)な人口を抱えるタワーマンションエリアに急激に変化した。ゆえに、中央区も公共交通をどう配置するか苦慮しているようだ。
そうしたなか、ゆりかもめの延伸については
「地上に高架を建設することで、地域を分断しかねない」
と、改めて否定的な見解を語った。
臨海地下鉄への期待は大きい。しかし、まずは都営バスをどれだけ増発するのか――これが地元住民にとっての課題だろう。