桜木町駅まで一気に開業できず! 開業50年「横浜市営地下鉄」の悲喜こもごもをご存じか
開業は1972年
2022年は鉄道開業150年ということで、各地で鉄道に関連するイベントが開催された。1872(明治5)年に開業したわが国最初の路線は、新橋(後の汐留)駅~横浜(現・桜木町)駅。鉄道発祥の一躍を担った横浜市は、多くのイベントを実施した。
幕末まで寒村でしかなかった横浜は、開国により多くの外国人が訪れる地となった。しかし、それだけで横浜が現在のような大都市へと発展したわけではない。横浜発展の原動力になったのは、なによりも鉄道の力が大きい。だから、鉄道開業150年という節目に、横浜市は力を入れている。
横浜発展のけん引役になったのは、新橋駅~横浜駅だけではない。2021年、横浜市は市営交通100年を迎え、2022年は市営地下鉄の開業50年という節目でもある。つまり、横浜市にとって鉄道のメモリアルイヤーのラッシュでもあった。
横浜市は私鉄の横浜電気鉄道を買収して市営化した。こうして横浜市交通局の前身でもある横浜市電気局が1921(大正10)年に誕生する。電気局という部署からもうかがえるように、当時は交通だけを専門に所管する部署ではなかった。
当時の鉄道は大半が汽車で、電車は市内を走る路面電車が主だった。電車の動力となる電気を自前で賄うために、横浜市は電気事業も同時に担当しなければならなかった。そのため、交通局ではなく電気局となった。
横浜市は電気局の誕生年を交通局誕生の起算年にしているので、2021年が市営交通100年。ちなみに、正式に交通局へと改称したのは1946(昭和21)年だ。初代電気局長に就任した青木周三は、鉄道院(現・国土交通省)での官僚経験があった。電気局とはいうものの、青木を局長に登用した人事を見れば鉄道事業を重視していたことは間違いない。
なぜ、横浜市はわざわざ私鉄を買収して市営化したのか。それは、市民から
「生活インフラなのだから、市が責任をもって運行するべきだ」
との声が高まったからだ。
大正期、著しく工業化が進み“大大阪”と形容された大阪市は、市内交通を民間に任せるのではなく、市営で運行した。市が責任をもって交通を整備することで産業が活発化し、そして年が発展する。交通整備にはそうした効用が見込めるが、他方で自前の交通を保持することは大都市のステータスにもなっていた。横浜は大阪に倣って、市営化に踏み切ったのだ。