チャイルドシート付き「スポーツ自転車」はなぜ増えたのか? その背後にあった、ママチャリの歴史と根深きジェンダー問題

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近年、「スポーツ自転車 + チャイルドシート」をよく見かける。その普及の背景には何があるのか。ママチャリの歴史を通して考える。

ママチャリと00年代自転車ブーム

スポーツ自転車(画像:写真AC)
スポーツ自転車(画像:写真AC)

 補助席を装着したいわゆる「ママチャリ」――ハンドルが高く、サドルの低いことで、安定性がよく視認性が確保できる自転車――を「パパ」が運転することは、現在、さほどめずらしくない。ママチャリという呼称も、「ママ」だけのものというより、世代や性別を超えて幅広く利用できる、使いやすい、安価な自転車を広く指している。

 一方、2010年代後半ごろから、スポーツ自転車(ロードバイク、クロスバイク)向けのチャイルドシートが売り出されており、それらを取り付けたロードバイクを、都市部で最近見かけることが増えた。

 スポーツ自転車はハンドルを低くし、サドルを高くすることで、前傾姿勢をとらせ、高速移動を維持できる。その分、小回りが利かず、視認性が低くなり、運転の柔軟性や安定性が犠牲になって、利用目的や利用者が限定される。

 そのため、スポーツ自転車に子どもが乗せられているのを見ると「大丈夫だろうか」と少し不安になる。これは、ママチャリの「安定性」があまりにも自明だからもしれない。

 2000年代中ごろに何度目かの自転車ブームがおこり、自転車通勤をすすめる言説が喧伝された。そうしたなか、高価なスポーツ自転車が「スマートでかっこいい」ととりわけもてはやされた。

 実際、2003(平成15)年から2013年にかけて、スポーツ自転車の販売台数は約3.5倍になった(国土交通省「第1回 安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会 配布資料」)。逆にママチャリは、

「かっこわるい」
「大人の男性が乗車するのはみっともない」

とされることも多かった。そうなると、現在のチャイルドシートを装着したスポーツ自転車は、高速走行という機能を表現したデザインのスマートさを犠牲にしており、ちょっとした「宗旨替え」ともいえそうだ。

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