チャイルドシート付き「スポーツ自転車」はなぜ増えたのか? その背後にあった、ママチャリの歴史と根深きジェンダー問題
近年、「スポーツ自転車 + チャイルドシート」をよく見かける。その普及の背景には何があるのか。ママチャリの歴史を通して考える。
「パパチャリ」の登場

現在、スポーツ自転車の販売台数が増加し、自転車通勤が喧伝され始めて20年近くがたった。そう考えると、チャイルドシートを取り付けたスポーツ自転車の登場は、性別役割分業がこの20年で徐々に変化してきたことの現れともいえる。
ブームだった若いころに購入した高価なスポーツ自転車を、子育て期に再利用することもあるだろう。異なる種類の自転車を所有して、使い分けることもできるが、少なからぬ出費になるし、都市部では駐輪するスペースの問題もある。
そうなると、デザインや高速走行を犠牲にしてチャイルドシートを装着することも選択肢のひとつになる。最近の電動型ママチャリのほうがデザインとしては調和がとれてように思えるが、そのあたりは好みの問題だ。
先に述べたが、ママチャリという形式は、1960年前後にすぐにできたわけではない。買い物の荷物を載せるために大きなカゴが設置され、ミニサイクルが現れてサドルが低く、ハンドルが高くなり、さらに補助席をめぐる技術的・法律的な試行錯誤があって、次第に形作られてきたものだ(このあたりの経緯については自転車文化センターの記述が参考になる)。
そんなわけで、スポーツ自転車にチャイルドシートを“接ぎ木”するのは「パパチャリ」といえそうなものが徐々にできていくプロセスかもしれない。とはいえ、スポーツ自転車に乗る女性も少なくないため、問題含みの比喩でもある。
いずれにしても、まだまだ男性の家事・育児の負担の割合は、女性に比べて低い水準にある。中途半端にも見えるチャイルドシートを取り付けたスポーツ自転車は、その変化が、現在進行形のプロセスにあることを教えてくれる。