DMVで鉄道ファン誘引も 赤字は30年連続、徳島「阿佐海岸鉄道」に漂う一抹の不安
道路と線路の両方を走るDMVで一躍注目を浴びた徳島県の阿佐海岸鉄道。しかし、先行きには不安の影も見え隠れする。
赤字続くも収益力が大幅に改善
道路と線路の両方を走るDMVの営業運行は世界初。DMV自体を観光資源とするわけで、住民の足から観光列車へ大きく軸足を移した形だ。その成果が、導入初年度となる阿佐海岸鉄道の2022年3月期の事業実績にはっきり表れた。
徳島県次世代交通課によると、乗客数は対前期比52%減の2万3362人だったが、うち53%に当たる1万2530人は12月25日のDMV運行開始後。わずか3か月余りで例年の半数以上の乗客を集めた計算になる。
DMV目当てにやってきた乗客は起点から終点まで乗車する人が多い。このため、旅客収入は1107万円となり、前期の699万円を58%上回っている。さらに、DMV関連商品の売り上げも伸びた。
最終的な赤字は8139万円。30年連続の赤字となったが、収益力は大幅に改善された。折からのコロナ禍でスタートが危ぶまれていただけに、関係者はほっと胸をなで下ろしている。この勢いは新年度に入ってもとどまる気配を見せない。
DMV導入前、2019年3月期~2020年3月期の月平均乗客数は約2000人だったが、2022年4月は3474人、5月は連休もあって4227人と伸びた。旧盆中の8月11~15日は1251人と5月の連休並みの乗客が訪れている。
旅客収入は2019年3月期~2020年3月期平均の約648万円に対し、4~5月の2か月間で約500万円。このペースでは年間の黒字は難しいが、徳島県次世代交通課は年間で1400万円程度の赤字削減が期待できると見ている。年間2億円以上と試算される経済波及効果も考えれば、人口減少と高齢化に苦しむ過疎地域にもたらされたプラスの影響は大きい。