DMVで鉄道ファン誘引も 赤字は30年連続、徳島「阿佐海岸鉄道」に漂う一抹の不安
道路と線路の両方を走るDMVで一躍注目を浴びた徳島県の阿佐海岸鉄道。しかし、先行きには不安の影も見え隠れする。
DMVブーム今も、関東からも観光客が
徳島県南部の海陽町と高知県東部の東洋町を結ぶ阿佐海岸鉄道の、道路と線路の両方を走るDMV(デュアル・モード・ビークル)が、順調な出足を続けている。しかし、先行きには不安の影も見え隠れする。
9月上旬、海陽町四方原の阿波海南駅。平日の昼前というのに、駅前のスロープには10人近い鉄道ファンがカメラやビデオを抱えて待ち構える。近くの阿波海南文化村から道路を通ってやってくるDMVが線路に上がるのを、撮影しようというわけだ。
駅の駐車場には鉄道ファンが乗ってきた車が並ぶ。「滋賀」「神戸」など関西ナンバーだけでなく、「品川」「横浜」など関東ナンバーも。近くの商店はDMVの運行開始以来、売り上げが以前の4倍に増えた日があり、「DMVのおかげで盆と正月が一緒にやってきた」と笑顔を見せていた。
運行する阿佐海岸鉄道は徳島県と高知県、沿線自治体、地元企業などが出資した第三セクター。旧国鉄時代に敷設され、使用されなかった海部(海陽町)~甲浦(東洋町)間8.5kmを阿佐東線とし、1992(平成4)年から運行してきた。
しかし、人口減少が著しい過疎地域の路線とあって、利用が伸び悩んで開業以来1度も黒字を出すことができないでいる。最近は年間1億円近い赤字が出ることもあり、徳島、高知両県と沿線自治体が積み立てた経営安定基金で補てんしてきた。
そんななか、起死回生の思いを込めて導入されたのがDMVだ。鉄道区間をJR牟岐線の阿波海南駅までひと駅延ばし、運行距離が10kmに。さらに、バス区間は阿波海南文化村~阿波海南間約1km、甲浦駅から海の駅東洋町、海陽町の道の駅宍喰温泉を結ぶ約4km、海の駅東洋町から高知県室戸市の海の駅とろむまでの約38kmが新設された。