10年前の中古車をリサイクル? 20世紀アメリカで驚異的に売れた「リノベ・カー」その悲しき末路とは

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1955年、米ロサンゼルスの機械メーカーが自動車製造に乗り出した。オリジナルは上物のボディ周りのみ。中古車をリサイクルした格安車は、驚異的な売り上げを記録した。その足跡をたどる。

新車が高嶺の花だった市民に照準

キレイにフルレストアされたパウエル・ピックアップ。まるで幼児が書いた画の様な素っ気ないディテールが特徴だが、フロントのノーズ周りは成形しやすさを優先し当時最先端の素材であるFRPが使われていた(画像:矢吹明紀)
キレイにフルレストアされたパウエル・ピックアップ。まるで幼児が書いた画の様な素っ気ないディテールが特徴だが、フロントのノーズ周りは成形しやすさを優先し当時最先端の素材であるFRPが使われていた(画像:矢吹明紀)

 1940年代の終わりから1950年代の初めにかけて、アメリカの自動車産業は第2次世界大戦後に新設計した新型車を次々と市場に投入した。

 いずれも戦前型とは一線を画する魅力的なクルマばかりとあって、折からの好景気を背景に市場は活性化を見せた。

 しかしその一方で、車両価格も上昇傾向にあったことから、主として収入の低い層の市民にとって戦後の新型車は高嶺の花であり、そうした層の人々は中古車を購入するしかなかった。

 こうした状況の中、1955年のアメリカ西海岸・カリフォルニア州ロサンゼルス中部のコンプトン地区にあった機械メーカー「Powell(パウエル)」が自動車製造に参入した。それまではスクーターを細々と製造すると同時に、他社の下請けで部品などを作っていたメーカーだ。

 取り扱うモデルは会社名と同じパウエルという名前の1種類のみ。ボディバリエーションは、ピックアップトラックとステーションワゴンのみという極めてシンプルなラインナップだった。

 ある意味、突如として自動車産業界に現れたパウエルに対して、アメリカの自動車産業を牛耳っていたジェネラル・モータース、フォード、クライスラーの大手3社は言うまでもなく、その他の中小メーカーもほとんど気にもとめなかった。