10年前の中古車をリサイクル? 20世紀アメリカで驚異的に売れた「リノベ・カー」その悲しき末路とは
1955年、米ロサンゼルスの機械メーカーが自動車製造に乗り出した。オリジナルは上物のボディ周りのみ。中古車をリサイクルした格安車は、驚異的な売り上げを記録した。その足跡をたどる。
消えたパウエル、今や超希少アイテム
こうしてリノベーションカーのルーツとも言えるパウエルは歴史の中に消えていくこととなった。
性能やデザインよりまずは安い価格。それもまた企業活動としては間違った方向性ではなかったし、実際に望外の販売成績も記録した。
とはいえ、折しもアメリカの自動車産業とその製品は豪華さの一途を目指していた1950年代半ばであれば、パウエルのクルマ作りが陳腐化するのも早かった。
そして現代。ヒストリックカーとしてのパウエルの位置付けはというと、今や紛れもないコレクターズアイテムである。
自動車大国アメリカに誕生し、わずかの間に消えていったパウエルは、何となくアメリカ人好みのノスタルジックかつ儚(はかな)い夢を思わせるのかもしれない。
その後、アメリカの自動車市場において、あるクルマをベースに別のクルマを模すことでカスタムカーとしての要素を高めたリノベーションカーが、プレミアム性という付加価値とともに評価されることとなるのはもう少し後。1960年代半ば以降のことである。