10年前の中古車をリサイクル? 20世紀アメリカで驚異的に売れた「リノベ・カー」その悲しき末路とは
1955年、米ロサンゼルスの機械メーカーが自動車製造に乗り出した。オリジナルは上物のボディ周りのみ。中古車をリサイクルした格安車は、驚異的な売り上げを記録した。その足跡をたどる。
オリジナルは上物のボディ周りのみ
それは、パウエルがあまりにも弱体かつ特殊な開発生産体制を取っていたことが理由である。
実はパウエルが作るクルマは、完全な自社設計ではなくエンジンその他のメカニカル関係は他車の中古または解体部品を再生オーバーホールした上で流用したものであり、オリジナルは上物のボディ周りのみ。言ってみればリサイクルカーというべき一面をも持っていた。
すなわち、現代で言うところのリノベーションカーによく似た商品だったのである。
パウエルがその小さなファクトリーから送り出し始めたクルマは、何と言っても1095ドルという新車とは思えない激安の販売価格が魅力だった。
1955年当時、大メーカーがリリースしていたピックアップトラックは、オプション無しでおおむねね1800ドル前後というもの。いくつかのオプションを付けて2000ドル前後というのが主要な販売価格帯だった。対してほぼ半額だったパウエルはそれなりに市場競争力があった。
ちなみにパウエルのフレーム、サスペンション、エンジン、トランスミッションといったメカニカルコンポーネンツは、当時のアメリカでかなりの台数が中古車もしくは解体車として流通していた、1940年から1950年に掛けてのプリマスというもの。
エンジンは排気量218CI(3570cc)または201CI(3290cc)の直列6気筒サイドバルブ。3速マニュアルのトランスミッションやリアアクスルと併せてリビルドした後に搭載され、フレームやサスペンション、ブレーキもしっかりオーバーホールが行われていた。
使っていたのは中古品や解体車の部品ではあったものの、新品時に準じた状態に再生されていたということである。