10年前の中古車をリサイクル? 20世紀アメリカで驚異的に売れた「リノベ・カー」その悲しき末路とは

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1955年、米ロサンゼルスの機械メーカーが自動車製造に乗り出した。オリジナルは上物のボディ周りのみ。中古車をリサイクルした格安車は、驚異的な売り上げを記録した。その足跡をたどる。

“不細工”でも新車、需要掘り起こし

 少々古くはあったものの、きちんとオーバーホールされていればその性能に大きな問題はなかったはずである。

 見劣りした箇所があったとすれば、それはいかにもプリミティブだった仕立てと無骨極まりなかったデザインのボディであり、飾り気のなさという意味ではとても大メーカーの製品に及ぶところではなかった。

 おおむね10年前の中古車のリビルドシャシーを使った不細工なクルマ――。そんなパウエルの戦略は、あくまでその価格にあった。

 中古車にするか、それとも少々不細工とはいえ新車にするか? こうした悩みに直面する若いユーザーは少なくなかったと見えて、1955年と1956年の2年間でピックアップを1300台弱、そして300台のステーションワゴンを売った。

 ほぼロサンゼルスを中心とする南部カリフォルニアだけの販売だったのにもかかわらず、この数字は、ある意味驚異的なことだったと言って良いだろう。

 しかし、商売的には何とか最低限の成果を得たパウエルではあったものの、結局は1956年を最後に自動車製造からは撤退を余儀なくされた。

 理由はベースとなっていたプリマスの中古車が、市場で品薄かつ高騰することとなり製造に支障が出始めたこと。

 背景には、パウエルの需要を見込んだ買い占めなどもあったと言われている。ここで会社にもう少し余力があれば、ベースを他車に求めるという道もあったのかもしれないが、結局のところ会社は撤退を選択した。

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