銚子電鉄の本調子はこれから? 「利益21万」ギリギリ経営、苦闘の歴史を淡々と振り返る
全国のサポーターが約1600万円を寄贈

こうした費用を賄うため、銚子電鉄では2003(平成15)年から県や市の「経営安定対策事業補助金」を得ていた。ところが2004年に前社長が会社名義で借り入れた約1億1000万円を着服していたことが発覚。これによって、補助金は止められ、金融機関からの融資も困難になり、2006年には平時の運行すら危ぶまれ、廃線の危機が大きく報じられるようになった。
運行の窮地に立たされた銚子電鉄が公式サイトで「ぬれ煎餅を買って」と呼びかけたことから、事態は急展開。「銚子電鉄サポーターズ」が結成され、全国の会員が約1600万円を寄贈。煎餅の売り上げと、銚子電鉄に乗るために訪れる観光客も増加したことから2006、2007年度は2年連続での黒字を達成することになった。
その後、2014年に銚子電鉄が国土交通省に提出した「生活交通改善事業計画」に基づき2023年度までの国、県、銚子市による支援が決定。この支援では、10年間で総額約8億円の設備更新費のうち国が3分の1、県と銚子市がそれぞれ6分の1、残りを銚子電鉄が負担することに。これによって、安全設備が更新できずに廃線する危機を当面脱することにはなった。
しかし、その後も経営難は続いた。
2016年には5期連続の赤字を脱したものの、翌2017年には再び赤字に転落。この年は前年度比で27.5%減という悲惨な結果になっている。売り上げが減った要因は、ぬれ煎餅の大手取引先であるJR銚子駅が改装で営業できなかったことに加えて、品ぞろえが長く変わっていないことが指摘された。
その後も「赤字が消える! 暗記セット」などグッズ販売を強化するなど物品販売を強化することに苦心してきた結果2021年は、わずかとはいえ黒字決算となったわけだ。
このように、銚子電鉄は長らく本業を、ぬれ煎餅ほか物販で支えるという構造が続いている。さまざまな要因で売り上げが大きく左右される物販に支えられている構造からの脱却は、長らく課題となっているが、まったく解決を見ていない。