道路を通るだけで収益化? 米国の最先端「スマートロード」をご存じか
米国のスマートロード事情とは
米国のスマートロード企業の名は、「Integrated Roadways」というデベロッパーで、インタビューに応じてくれたのは、取締役社長のTim Sylvester氏だ。Tim氏は事業内容について、次のように答えた。
LiB:自己紹介と会社紹介をお願いします。
Tim氏:はい、私はIntegrated Roadwaysの創業者で、現在はCTO(最高技術責任者)、最高経営責任者(CEO)として働いています。当社は行政/自治体/金融会社/建設会社などと協業しており、スマート舗装システムの製品を作っています。コロラド州をはじめ、米国のさまざまな市街地でスマートロード事業を行っています。
LiB:貴社のスマートロード事業は、具体的にどのような取り組みでしょうか。
Tim氏:現在、センサーを道路に埋め込んで、道路上を走行する車両から情報を取得しています。道路と接触した車両のさまざまな情報を取得し、取得した移動データや車両に関する情報を販売しています。最初は、2018年にコロラド州の自治体から受注したプロジェクトで、事故発生防止や交通ルール違反防止のために、Brighton通りで初めてパイロットケースを実行し、取得された情報を自治体と警察に提供しました。
スマートロードの実用化による事業機会
LiB:スマートロードの実現には「技術的観点」「収益的観点」など、さまざまなハードルがあります。テレビや映画のなかだけの話のように感じますが、Timさまはどのようにスマートロード事業を成功させたのでしょうか。
Tim氏:道路自体を自給自足させることがポイントです。これまでに、スマートロード実現の計画は世界各国で多くありましたが、ほとんどは実証実験にとどまってしまい、なかなか実用化されませんでした。
LiB:自給自足というのは、スマートロード事業で発生したコストをスマートロード事業で得られた収入で補うことですか。例えば、最近よく見られる太陽光発電道路は、自給自足のスマートロードに該当しますか。
Tim氏:はい。多くの失敗事例は、先進技術を持つスマートロードを作り、ユーザーを満足させますが、スマートロードから発生した維持管理コストなどを負担できず、事業化に失敗することが多いです。残念ながら、太陽光発電道路もフランスで取り組まれたWattwayのように、発電で得られる収入だけでは維持管理費用をカバーできませんでした。
LiB:電力販売で得られる収入が、太陽光発電道路の維持管理費用に比べて高いですね。
Tim氏:その通りです。最近では電力だけで事業が成り立たないとわかってきました。そのため、われわれはこの仕組みを開発する際、「今後何がトレンドになるか」というところから考えました。その結論のひとつとして、スマート舗装システム内のセンサーで取得した交通情報の販売に至りました。これは、本事業が成功できた要因ではないかと思います。
日本進出はあるのか
LiB:どういった情報を取得し、どのような顧客に販売しているのか、教えてください。
Tim氏:自治体に情報を提供したのが最初でしたが、エンジニアファームやデベロッパーのニーズが高まっています。例えば、デベロッパーは都市計画をする際、「どのような車種が、1日何台くらい、この通りを通行するか」を知りたいので、われわれは車種や車両サイズ、時間帯ごとの走行速度などの情報を提供しています。
LiB:貴社は今後、どのように事業を拡大していく予定でしょうか。
Tim氏:カンザス州のレネックサ市で2022年、道路から直接電気自動車を充電できるスマートロードプロジェクトが立ち上げられました。また、現在道路下にあるセンサーで車両情報を取得していますが、今後自動運転を推進するには、道路から車両への情報提供も検討しています。レネックス市におけるプロジェクトでも、自動運転のシャトルバス等の乗り物にも対応するように設計しています。また、弊社のスマートロードは現在、北米のみ展開していますが、今後、ヨーロッパとアジアで事業を展開する予定です。
LiB:脱炭素社会と自動運転社会を迎えるためのスマートロードですね。最後の質問になりますが、日本への進出は考えていますか。
Tim氏:もちろんです。日本の自動車メーカーのシェアは世界上位ですので、検討したことがあります。ただ、日本の道路は米国と違ってアスファルトでできているため、われわれの技術は使いづらいと思います。あと、日本の規制が米国より厳しいため、日本で影響力のある組織とコネクションを持たなければ、なかなか実現は難しいと考えています。
LiB:もし、日本におけるパートナー企業や行政とうまく連携できれば、日本でもスマートロード事業の拡大を検討していますか。
Tim氏:そうですね。最初はあまりお客さまに認められないかもしれませんが、行政にあまり手間をかけず、自給自足ができる最先端のスマートロードの実績を見せることでハードルはクリアできると思います。ぜひ一緒に事業展開を考えたいです。