悪用される「性善説」 ロマンスカー9300回カラ予約事件に見る、現代人の様相と車両の「魔力」
特急券を連続自動キャンセル

先日、埼玉県志木市に住む48歳無職の男が書類送検された。
この男は2021年、およそ9か月間にわたり、小田急ロマンスカー(以下、ロマンスカー)の特急券約9300枚をオンラインで予約、発車15分前までに決済を行わずに自動キャンセルを繰り返していた。男は列車に乗車することを愛好する「乗り鉄」だった。
調べに対して、男は
「乗務員の態度が気に入らず、嫌がらせをするためだった」
と容疑を認めている。
その「乗務員の態度」とはどのようなものだったのか。『毎日新聞』2022年7月14日付朝刊によれば、男はロマンスカーに乗ることが好きで、雰囲気や景色を楽しむために乗車していたそうで、その際
「(ロマンスカーの)展望席に座って優越感に浸っていたのに車掌が自分の席の隣に乗客を乗せたことがあった」
という。
あまりにも身勝手な犯行に、捜査にあたった警視庁捜査一課では起訴を求める「厳重処分」の意見をつけている。今後の動向は未定だが、刑事・民事の両方で厳しい判決が予測される。
悪用されるオンライン予約

ロマンスカーを運行する小田急電鉄は、
・e-Romancecar
・ロマンスカー@クラブアプリ
・EMot
・EMotオンラインチケット
という四つのオンライン予約方法を用意している。
e-Romancecarは会員登録なしで予約可能で、特急券は券売機、窓口などで購入するだ。今回の事件に対応したのか、同社サイトでは予約件数の制限を
「同一日で発駅・着駅が重複する特急のご予約は1列車まで」
としているが、システムが悪用されたのは明らかだ。
今回のようなケースはさすがに珍しいが、オンライン予約を悪用する事例はさまざまな業種で起きている。
近年大きく報道されたものでは、2020年3月に神戸市に住む無職の男がプロ野球・オリックスの公式戦チケットをオンラインで大量予約した。男は本名と偽名を使って6人分の名義をつくり、公式戦2試合で合計1873席分を予約していた。
不審に思った球団側は、キャンセルを行った上で通報。調べに対して男は
「周囲に観客がいないほうが見やすいし、スタンドで自分が目立つと思った」
と供述している。