悪用される「性善説」 ロマンスカー9300回カラ予約事件に見る、現代人の様相と車両の「魔力」
小田急ロマンスカーで「ウソ予約」を繰り返したとして、埼玉県志木市に住む48歳無職の男が書類送検された。性善説で作られる予約システムの今後とは。
ロマンスカーの「魔力」
小田急の損失も大きい。
ロマンスカーの特急料金は、最も低い区間で420円だ。9300回のカラ予約で単純計算すると
「420円 × 9300回 = 390万6000円」
の損害となる。
なにより、書類送検された男は展望席を執拗(しつよう)に予約していた。実際に乗車しようと思っていた人に与えた損失は少なくないだろう。
男の行為によって
「ロマンスカーの展望席はいつも予約ができない」
という風評が広まってしまえば、利用者の機会損失にもつながりかねない。ロマンスカーが好きにもかかわらず、こうした行為に走ったとすれば、極めて幼稚だ。
座席がすいているとき、筆者(昼間たかし、ルポライター)も何度か展望席を取ったことがある。そのたびに、窓に身を乗り出すようにしてカメラで撮影している乗客に視界をふさがれる。ロマンスカーは特定の何かを引きつける「魔力」があるのだろうか。